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 この小説は、間違えて短編小説として投稿したものを、長編小説として投稿しなおしたものです。大変失礼しました。

 私が最期にいた場所は、とても狭くて暑苦しくて、息をするのも苦しい所だった。暗くて、なにも見えない箱の中。外から聞こえるのは男の人の怒鳴り声と、泣きながら何かを訴えている女の人の声。


 その声が、自分の母親のものだということは、もちろん知ってた。

 怒鳴っている男の人は、私の父親ではなかった。


 箱の中で、私は精いっぱい大きな声をあげて泣いた。どうにかしなくちゃ、と思った。自分のことも、おかあさんのことも。


「うるせえんだよ!!」

 怒鳴り声と同時に、大きく揺れる箱。私の体は急にふわりと軽くなって、それから地面に叩きつけられた。

 泣くのをやめてしまえば、私への攻撃はなくなるかもしれない。だけど私は泣き続けた。

「お願い、もうやめて!」

 おかあさんの悲鳴のような声が聞こえて、それからゴンッ!という鈍い音が聞こえてきた。殴られたんだ、と瞬時に理解した。


 やめて。おかあさんをいじめないで。


 私は一層激しく泣いた。どうにか私に目を向けてもらえるように。あの人がおかあさんから離れるように。

 

 

 私に近づいてきた乱暴な足音は、おかあさんのものではなかった。


 大きな足で、箱ごと蹴られた衝撃。頭の中身が揺さぶられるような感覚。私は口から、生ぬるくてどろどろしたものを大量に吐き出した。頭と胸が痛くて息ができない。苦しい。


 遠くの方で、おかあさんの叫び声が聞こえていた。


 私の名前を、呼んでいた。



 だけど、私はもう、泣けなかった。



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