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第73話 小さな緊張の影
平日の夕方。
二人で帰宅途中、偶然、彼の仕事仲間と遭遇する。
「お疲れ様です!」
元気な声に、心臓が跳ねる。
私はすぐに笑顔で挨拶するけれど、内心は少しざわつく。
彼も軽く会釈を返すが、目が一瞬だけ私を確認する。
その一瞬が、妙に胸を締め付ける。
「大丈夫?」
歩きながら彼に尋ねる。
「うん、全然」
少し照れくさそうに答える彼。
でも、その微妙な距離感が、
昨日までの甘さを思い出させる。
「でも、ちょっと気になった?」
私は小さく笑う。
「……少しね」
彼も笑う。
それだけで、心のざわつきは収まる。
触れずとも、視線や距離で確認できる。
これが、二人の信頼の形。
帰宅後、布団に入ると、手をそっと握られる。
軽い触れ合いだけでも、昨日の甘さを思い出す。
小さな緊張の影は、
二人の関係を崩すものではなく、
むしろ、絆を再確認させる試練。




