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第70話 甘さの急上昇
夜の街を歩く。
少し冷たい風が肌に触れる。
でも、心は温かい。
彼が、ふと私の手を引く。
「寒い?」
「うん、少し」
手を握るその力加減。
絶妙で、ぎこちなくも心地いい。
信号待ちで、
彼の視線が私を捉える。
「…行こうか」
どこに、という言葉はない。
でも、心の中で理解する。
近くの小さな公園。
人通りはほとんどなく、
ベンチだけが静かに並ぶ。
彼が、そっと肩に触れる。
そして、手を握る。
胸の奥が跳ねる。
息が、少し荒くなる。
「待って」と言おうとした。
でも、言えなかった。
手の温もりが、
言葉よりも強く伝わる。
少しだけ顔を近づける。
触れる直前で、彼が微笑む。
「ゆっくりでいい」
その一言に、全てが溶ける。
距離を保ちながら、
でも、甘さは急上昇する。
公園の夜景の光が、
二人だけの世界を照らす。
歩き出すとき、
手は離れない。
触れたいけど焦らない。
その絶妙なバランスが、
胸を高鳴らせる。
帰宅するまでの間、
全てが特別な時間。




