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第68話 小旅行の余韻
帰宅の電車の中。
車窓に映る自分の顔を見て、
小旅行の時間を思い返す。
手を繋がなかったのに、
心の距離は間違いなく縮まった。
隣に座る彼は、
少し疲れているのに、
穏やかで、優しい表情をしている。
「楽しかったね」
私は小さくつぶやく。
彼も、同じくらい小さく返す。
「うん、楽しかった」
会話は少ない。
でも、沈黙は心地よい。
帰宅して、
それぞれの部屋に入ると、
少し寂しさが襲う。
でも、胸は温かい。
スマホを手に取り、
短いメッセージを送る。
「今日はありがとう」
すぐに返事が来る。
「こちらこそ、ありがとう」
その短いやり取りだけで、
昨日の甘さと緊張の余韻が、
胸にしっかり残る。
ベッドに横になりながら、
私は思う。
距離を保ちつつも、
触れずに近づく。
それが、二人にとっての正解だった。
甘く、少しドキドキする。
でも、安心感もある。
小旅行の余韻は、
日常の中で、
少しずつ私たちの関係を染めていく。




