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第67話 小旅行の夜
小旅行の最終夜。
部屋の窓から見える夜景は静かに光っている。
外は寒いのに、部屋の中は温かい。
夕食後、二人で布団に座る。
まだ話すことはたくさんある。
彼が、ふと手を伸ばす。
肩に触れるだけ。
でも、胸の奥が跳ねる。
「今日は、楽しかったね」
私が言う。
「うん」
彼も微笑む。
少し沈黙。
お互いの呼吸が重なる。
「ねぇ」
彼が小さく言う。
「この距離、嫌じゃない?」
私は首を横に振る。
「嫌じゃない。心地いい」
彼の手が、そっと私の手に触れる。
握ることはまだない。
でも、触れただけで、二人の間の空気が変わる。
夜景を見ながら、互いの体温を感じる。
手は離さず、でも大胆なことはしない。
その微妙な距離感が、甘くて緊張する。
「触れたいけど…我慢する」
彼が小声でつぶやく。
私は笑う。
「私も、同じ」
笑いながら、肩を寄せ合う。
呼吸が重なるたびに、
心臓が速くなる。
外の風の音と、夜景の光。
部屋の静けさ。
それだけで、二人の世界はできあがる。
小旅行の最後の夜。
甘さのピーク。
でも、危うくなく、穏やかでもない。
手を握らず、触れ合わず、
ただ隣にいるだけで、
心は完全に近い。
この夜を、
二人だけの宝物にする。




