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第66話 小旅行の小さな危機
朝、旅館の窓から差し込む光で目覚める。
外は快晴。
しかし、心は少しざわついていた。
昨夜、手を握ったまま眠ったけど、
朝になったら、少し距離を感じる。
朝食の時間。
小さな食堂で向かい合う。
彼が、少し考え込む表情を見せる。
「どうしたの?」
「いや…昨日のことを、ちょっと考えてて」
私は心の中で、少し冷静になる。
まだ、踏み込みすぎたか。
でも、後悔はしていない。
彼は続ける。
「君に無理させてないかな、とか」
優しさの裏で、微かな不安。
私は微笑む。
「大丈夫。楽しかった」
でも、彼はすぐには笑わない。
食事を終えて、外に出る。
川沿いの散歩道。
昨日の笑顔が蘇る。
しかし、心配は消えない。
小さな橋の上。
彼が、ふと足を止める。
「…やっぱり、俺、まだ少し怖い」
私は理解する。
告白しても、関係を深めても、
完全には安心できないのは自然だ。
「私も、少し怖い」
その言葉に、彼は驚き、
でも笑う。
「なら、手をつないで歩こう」
再び、指先が絡む。
温度を感じる。
危機は、
ほんの小さな揺らぎだった。
でも、それを一緒に認めることで、
二人の関係は、より深くなる。
川沿いの風が、
二人を優しく包む。
小旅行の小さな危機。
甘さと不安の混ざる時間。
それでも、
逃げずに向き合える。




