第63話 小さな試練
ある日、仕事終わりに彼から連絡が入った。
「急に残業になった」
「夕食は一人で大丈夫?」
いつも通りの報告。
でも、
少しだけ心がざわつく。
「大丈夫だよ」
短く返す。
でも、
頭の片隅に残る違和感。
待っている間に、
私は考える。
なぜ、少し気になるのか。
それは、
信頼の試練。
会えない時間が、
感情を揺さぶる。
夜、自宅。
スマホを手に取り、
ふと彼の行動を思い出す。
最近の会話。
些細な気遣い。
信頼は、積み重なっている。
でも、
信頼は、崩れる瞬間もある。
やっと彼からメッセージ。
「終わった」
「今から帰る」
心臓が早くなる。
少しして、
玄関のチャイム。
ドアを開けると、
疲れた顔の彼が立っている。
「遅くなって、ごめん」
微笑む。
言葉は簡単。
でも、
全てを許せる。
一緒に食卓につく。
軽く会話しながら、
夕食。
触れ合わない。
でも、
近い距離。
その時、
理解する。
信頼は、
距離では測れない。
距離を保ちながらも、
気持ちは伝わる。
小さな試練を乗り越えるたび、
二人の関係は、
少しずつ深くなる。
夜、布団に入る。
スマホを見る。
彼からの短いメッセージ。
「今日もありがとう」
「おやすみ」
私は、
微笑む。
小さな日常の中で、
信頼と絆が、
確かに育まれている。




