第62話 恋人っぽい初めての時間
告白から、数日後。
初めての休日。
二人で過ごすことになった。
「どこ行く?」
彼の問いに、
私は少し考えてから答える。
「散歩と、カフェ」
特別じゃない時間。
でも、
これが大事だと思った。
街を歩く。
手は、自然に触れる程度。
ぎこちなくも、心地いい。
公園のベンチに座る。
彼が、笑いながら言う。
「手、繋いでいい?」
迷う必要はない。
「うん」
小さく返す。
指先が触れる。
ゆっくりと絡む。
心臓が、
早くなる。
でも、怖くはない。
お互いの呼吸を、
確かめるように、
ただ並んで座る。
昼食は小さなカフェ。
隣同士で座る。
肘が触れるたび、
心が跳ねる。
声を出さなくても、
伝わるものがある。
店を出て、
帰り道。
「……なんだか、不思議」
彼がつぶやく。
「何が?」
「普通のことなのに」
「特別に感じる」
私も、同じ気持ちだった。
「うん」
「特別だよ」
二人の距離は、
近すぎず、遠すぎず。
初めての、
恋人っぽい時間。
特別なデートでも、
派手な演出でもない。
ただ、並んでいるだけ。
でも、
それで十分だった。
夜、別れるとき。
「また、明日ね」
軽く笑う。
「うん」
私も笑う。
心臓はまだ速い。
でも、恐怖はない。
二人で選んだ時間。
甘さと緊張が、
完璧に混ざったまま。




