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第57話 踏み込んだ、その先で

次に会ったのは、

少し間が空いてからだった。


忙しい、

という理由。


本当だと思う。

でも、

理由はそれだけじゃない。


お互い、

考える時間が必要だった。


場所は、

静かなカフェ。


昼と夜の境目。


彼は、

いつもより少し、

緊張しているように見えた。


注文を済ませて、

向かい合う。


しばらく、

雑談。


そして、

唐突に。


「今の関係」

彼が言う。


声は、

落ち着いている。


「どう、思ってる?」


逃げ道のない質問。


私は、

少し考えてから答える。


「安心してる」

「でも、宙に浮いてる感じ」


正直だった。


彼は、

うなずく。


「俺も、同じ」


間。


「だから」

彼は続ける。


「一つ、提案がある」


提案。


告白じゃない。

約束でもない。


でも、

一歩先。


「もう少し」

「頻繁に会わない?」


条件付きの、

接近。


「恋人とか」

「そういう言葉は、使わない」


ここで、

少し胸がざわつく。


期待と、

落胆。


同時に来る。


「ただ」

彼は続ける。


「他の人とは、会わない」

「君とも、曖昧なままにはしない」


矛盾しているようで、

彼なりの誠実。


私は、

ゆっくりと息を吐く。


これを、

どう受け取るか。


私は、

選ぶ側。


「期限は?」

そう聞いた。


彼は、

少し驚いた顔をしてから、

答える。


「三ヶ月」


具体的で、

逃げにくい。


「その間に」

「ちゃんと、答えを出す」


私も、

答えを出す。


対等。


私は、

少しだけ考えてから言った。


「いいよ」


彼の表情が、

わずかに緩む。


「でも」

付け加える。


「私が、先に降りるかもしれない」


彼は、

笑った。


「それでも、いい」


軽くない笑顔。


カフェを出て、

並んで歩く。


今日は、

自然に距離が近い。


触れないけど、

近い。


期限付きの関係。


それは、

保険でも、

逃げでもない。


選ぶための、

猶予。


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