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第56話 欲しいと思ってしまった

それに気づいたのは、

帰り道だった。


特別な出来事は、

何もない。


いつも通り会って、

いつも通り話して、

いつも通り別れた。


なのに。


電車の揺れの中で、

胸の奥が、

静かにざわつく。


足りない。


その感覚が、

はっきりしてしまった。


欲しい、と思った。


彼の時間。

彼の温度。

触れるか触れないか、

その選択権ごと。


それに気づいて、

少しだけ怖くなる。


これは、

依存じゃないか。

期待じゃないか。


家に着いて、

靴を脱ぐ。


照明をつけずに、

ソファに座る。


スマホが、

手の中で重たい。


連絡すれば、

きっと返ってくる。


でも、

今それをしたら、

自分の弱さに負ける気がした。


欲しいから連絡する。

寂しいから呼ぶ。


昔の私なら、

迷わなかった。


でも、

今の私は違う。


違うはずだ。


ベッドに横になって、

天井を見る。


欲しい、という感情は、

悪じゃない。


ただ、

扱い方を間違えると、

自分を失う。


私は、

ゆっくりと息を吸う。


そして、

短いメッセージを打つ。


「今日は、楽しかった」


それだけ。


要求も、

含みもない。


少しして、

返事が来る。


「俺も」

「また、会おう」


その文を見て、

胸が、少しだけ満たされる。


全部は、要らない。

今は、これでいい。


欲しいと思ってしまった。


でも、

欲しがりすぎない。


その選択ができた自分を、

少しだけ、信じてみる。

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