第49話 条件を出す側
返事を保留してから、
三日が過ぎた。
彼からは、
何も来なかった。
催促も、
探りもない。
それが、
少しだけ意外だった。
四日目の夜、
私のほうから連絡を入れる。
「少し、話せる?」
すぐに、
「今からでも」
と返ってきた。
早すぎて、
少し笑う。
会ったのは、
前と同じ駅。
でも、
人の流れが多い時間帯。
静かすぎない場所。
「急にごめん」
彼は、
首を振る。
「ありがとう」
「来てくれて」
その言い方が、
もう、以前と違う。
私たちは、
立ったまま向き合う。
座らない。
逃げない。
「この前の話」
私から切り出す。
「考えた」
彼は、
何も言わずに待つ。
待つ、という姿勢。
それだけで、
少し評価が上がる。
「近づくのはいい」
私は言う。
「でも、条件がある」
彼の眉が、
わずかに動く。
「一つ目」
「曖昧にしない」
都合のいい距離。
逃げ道としての関係。
それは、
もう要らない。
「二つ目」
「私を、過去の埋め合わせにしない」
彼は、
視線を落とす。
効いている。
「三つ目」
一拍置く。
「私が、いつでも引き返せること」
選ぶのは、
私。
それを、
最初から明確にする。
沈黙。
人の声が、
背後を流れていく。
彼は、
ゆっくりと息を吸ってから言った。
「全部、受ける」
即答じゃない。
でも、
迷いもない。
「それで」
続ける。
「それでも、俺は」
「近づきたい」
私は、
少しだけ考えてから答えた。
「じゃあ」
「少しずつ」
約束でも、
恋人でもない。
でも、
対等な立場。
彼は、
小さくうなずいた。
その仕草が、
どこか安心できた。
駅の改札前。
今日は、
触れない。
それでいい。
私は、
先に背を向ける。
追いかけてこない。
それも、
条件の一部。
翻弄は、
終わらない。
でも、
ルールは決まった。




