第48話 告白未満の言葉
次に会ったのは、
それから二週間後だった。
彼のほうから、
日時と場所だけが送られてきた。
理由はない。
説明もない。
私は、
少し考えてから、
了承した。
選んだのは、
人目のあるレストラン。
逃げ場がある場所。
彼は、
約束の十分前に来ていた。
「久しぶり」
たった二週間なのに、
そう言うしかない距離。
食事は、
驚くほど普通だった。
仕事の話。
最近見た映画。
他愛のない感想。
重たい空気は、
彼が意識的に避けている。
それが、
分かる。
食後、
コーヒーが運ばれてきた頃。
彼は、
カップを持ったまま、
視線を落とした。
「俺さ」
一拍。
「もう一回、近づきたい」
告白じゃない。
好きとも、言わない。
でも、
逃げ道も残していない。
私は、
すぐには答えなかった。
「それは」
静かに聞く。
「どういう意味で?」
彼は、
少しだけ苦笑する。
「正確に言うと」
「付き合いたい、とは違う」
正直だ。
ずるくもある。
「でも」
続ける。
「何もしないまま」
「終わらせるのは、嫌だ」
私は、
彼を見る。
目は、
逸らさない。
三年前なら、
この言葉だけで、
心は揺れていた。
今は、
違う。
「それで」
私は言う。
「私が、また傷つく可能性は?」
彼は、
即答しなかった。
考える時間を取る。
それが、
答えだった。
「ある」
ようやく、言う。
「でも」
「逃げない」
私は、
小さく息を吐く。
誠実。
でも、
それだけじゃ足りない。
「考えさせて」
そう告げて、
席を立つ。
彼は、
止めなかった。
追いかけもしない。
店を出て、
夜風に当たる。
胸は、
静かだ。
期待も、
恐怖も、
きれいに並んでいる。
告白じゃない。
約束でもない。
でも、
確実に一線は越えた。
次に進めば、
もう戻れない。




