第46話 即答しない選択
次に連絡が来たのは、
三日後だった。
短い文。
「近くまで来る用事がある」
「時間が合えば、少し」
理由がある。
でも、
理由になりきらない。
私は、
すぐには返さなかった。
忙しかったわけじゃない。
迷っていたわけでもない。
ただ、
即答しない自分を、
選びたかった。
夜になってから、
一行だけ返す。
「一時間だけなら」
それで十分。
会ったのは、
駅から少し離れた公園。
昼間は、
子どもで騒がしい場所。
今は、
ベンチと街灯だけ。
彼は、
先に来ていた。
立ち上がりかけて、
やめる。
その動作が、
少しだけ可笑しい。
「時間、取ってくれてありがとう」
丁寧すぎる言い方。
昔なら、
距離を縮める言葉を選んでいた。
今は、
踏み込まない。
並んで歩く。
触れない。
近すぎない。
「最近、どう?」
本当に、
それだけ。
仕事の話。
天気の話。
特別じゃない話。
それなのに、
彼の視線は、
何度も私に戻る。
確認するみたいに。
「……聞いていい?」
少しだけ、
声のトーンが変わる。
私は、
歩いたまま答える。
「内容による」
彼は、
苦笑してから、
正面を向いた。
「今は」
「誰とも、付き合ってない」
告白じゃない。
確認でもない。
でも、
意味は、はっきりしている。
私は、
足を止めた。
彼も、
立ち止まる。
「それを」
私は、静かに言う。
「私に言う必要、ある?」
彼は、
言葉を探す。
「ない」
「でも……」
その「でも」が、
すべてだ。
「私は」
続ける。
「誰かの状況を聞いて」
「期待する立場には、戻らない」
きっぱりと。
彼は、
何も言わなかった。
否定もしない。
言い訳もしない。
それが、
少しだけ、救いだった。
公園の出口で、
立ち止まる。
時間は、
まだ少し残っている。
でも、
今日は、ここまで。
「今日は、ありがとう」
彼が言う。
私は、
軽く会釈する。
背を向けて、
歩き出す。
心臓は、
少し速い。
でも、
足取りは、安定している。
翻弄されているのは、
どちらか。
その答えは、
まだ、出さなくていい。




