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第29話 偶然じゃない再会

空港に降り立った瞬間、

空気の匂いが違った。


言葉も、

表示も、

すべてが、少し遠い。


ここまで来たことが、

まだ、現実に追いつかない。


荷物を受け取って、

出口へ向かう。


人の流れに、

ただ、押される。


その途中で、

視界の端に、

見覚えのある背中が映った。


ありえない。


足が、

止まる。


一度、目を閉じて、

もう一度、見る。


間違いない。


帽子を深くかぶり、

マスクをした姿。


それでも、

分かってしまう。


あの人だ。


心臓が、

耳の奥で鳴る。


偶然?

このタイミングで?

この場所で?


考えるより先に、

体が動いていた。


距離が、

縮まる。


声をかけるべきか、

迷う。


でも、

迷っているうちに、

向こうが振り返った。


一瞬の沈黙。


目が合う。


驚き。

困惑。

そして、

小さく、息をのむ表情。


「……どうして、ここに」


低い声。


逃げ場は、ない。


「話したかった」

それしか、言えなかった。


周囲を気にして、

あの人は、

静かに歩き出す。


私は、

何も言われないまま、

後を追う。


偶然じゃない。

でも、

約束でもない。


不安定な距離。


通路の端で、

立ち止まる。


「来るべきじゃなかった」


そう言われると、

思っていた。


でも、

続いた言葉は、

予想と違った。


「……でも、来ると思ってた」


胸が、

強く、跳ねる。


視線が、

外される。


「今は、誰にも会えない」

「でも、君だけは……」


言葉が、

途中で切れる。


選ばれてしまった。

そう、思った。


嬉しさと、

恐怖が、

同時に、押し寄せる。


私は、

ここに来てしまった。


もう、

後戻りはできない。


この再会が、

救いなのか、

破滅なのか。


それを決めるのは、

これからだ。

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