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第23話 守るための距離

翌朝、公式からの更新があった。


いつもより、少しだけ早い時間。

それだけで、胸がざわつく。


内容は、普通だった。

活動報告。

感謝の言葉。


でも、その最後。


「応援してくれるみんなが、

安心できる距離を大切にしたいです」


たった一行。

名前も、理由も、説明もない。


それなのに、

私には、十分すぎるほどだった。


ああ、選ばれたんだ。

距離のほうが。


画面を閉じて、

しばらく、動けなかった。


責められてはいない。

名指しもされていない。


それが、余計に、痛い。


守ろうとした。

あの人は。


世界を。

立場を。

ファンを。


そして、たぶん、

私も。


私は、静かにスマホを手に取る。


フォローを外す。

通知を切る。

検索もしない。


ひとつずつ。

丁寧に。


手が、少し震える。


これで、いい。

これが、正解。


そう言い聞かせながら、

最後に、もう一度だけ、

写真を見た。


遠くのステージ。

手を振る姿。


本来の距離。


画面を消して、

深く息を吐く。


推し活を始めた日のことを、

思い出す。


ただ、楽しかった。

ただ、好きだった。


それだけだったのに。


私は、選んだ。


近づくことじゃなく、

守るために、離れることを。


その選択が、

正しかったかどうかは、

まだ、分からない。


でも、これ以上、

壊したくなかった。


世界が、少し静かになる。


その静けさの中で、

私の恋だけが、

行き場を失っていた。


――これで、終わり。


そう思った。


でも、

物語は、

そんなに優しくなかった。

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