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第22話 広がってしまう

気づいたのは、夜だった。


何気なく開いたタイムライン。

いつもと同じ流れの中に、

引っかかる言葉があった。


「今日、見たんだけどさ」

「もしかして、あれって……」


曖昧な書き方。

名前は、出ていない。


でも、分かる。

嫌な予感だけは、外れない。


スクロールする指が、

少し、速くなる。


「一般人っぽい人と一緒だった」

「距離、近くなかった?」


心臓が、音を立てる。


写真は、ない。

証拠も、ない。


ただの噂。

ただの想像。


それなのに、

言葉は、勝手に形を持っていく。


「前から怪しいと思ってた」

「推し変しよ……」


軽い。

軽すぎる。


その軽さが、

余計に、苦しい。


私は、画面を伏せる。


違う。

何もなかった。


触れていない。

越えていない。

選んでいない。


それでも、

世界は、そうは見てくれない。


少しの偶然。

少しの沈黙。

少しの距離感。


それだけで、

物語は、作られてしまう。


スマホが、また震える。


今度は、本人からじゃない。

関係者でも、仲間でもない。


ただの、

「誰か」の言葉。


私は、息を整える。


ここで否定したら、

もっと、広がる。


黙っていたら、

誤解は、真実になる。


どちらを選んでも、

傷は、残る。


あの人の顔が、

頭に浮かぶ。


困ったような笑い。

一瞬だけ、伏せた視線。


私は、決めきれないまま、

夜を迎える。


推し活は、

誰にも迷惑をかけないはずだった。


でも、今は違う。


私が選んだ沈黙が、

誰かを、巻き込んでしまう。


世界が、ざわつき始めている。


その中心に、

私が、立ってしまったことだけは、

もう、否定できなかった。

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