第18話 戻れない視線
画面を見ないようにして、一日が過ぎた。
意識して離れるほど、
頭の中に、名前が浮かぶ。
皮肉だ。
夜、ふとした拍子に、
動画サイトを開いてしまった。
おすすめに、あの人が出てくる。
逃げ場は、ない。
再生しない。
そう決めたのに、
親指が、勝手に動く。
ステージの上の姿。
完璧な笑顔。
慣れた仕草。
計算された距離。
全部、知っている。
全部、知らなかった。
画面越しの視線が、
前より、近く感じる。
それだけで、
胸の奥が、ざわつく。
「ああ、こういう目をするんだ」
そんなことを思ってしまった瞬間、
もう、戻れないと分かる。
推していた頃は、
解釈なんて、いくらでもできた。
でも今は、
現実の横顔が、混ざってしまう。
ただのファンとしては、
見られなくなっていた。
コメント欄は、賑やかだ。
何も知らない言葉が並ぶ。
羨ましい。
少しだけ。
私は、そっと画面を閉じた。
知ってしまった視線は、
なかったことにできない。
触れていないのに、
触れた後みたいに、
心が、元の位置に戻らない。
推しを見る目が、
変わってしまった。
それは、
恋になったからなのか、
失ったからなのか。
答えは、まだ、出ない。
ただひとつ。
私はもう、
あの頃と同じ場所には、
立てない。




