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第17話 推す場所を失う

朝、目が覚めて最初に思ったのは、

今日は、何もない日だということだった。


予定もない。

連絡も、来ない。


静かすぎて、

逆に落ち着かなかった。


いつもの癖で、スマホを手に取る。

無意識に、推しの名前を探してしまう。


更新は、ある。

告知も、写真も、いつも通り。


変わっていない。

少なくとも、表向きは。


それが、少しだけ、苦しい。


画面の中の笑顔を見て、

胸が、きゅっとなる。


近づいてしまったせいで、

前みたいに、素直に見られない。


知っている顔。

でも、知らない距離。


コメント欄を開いて、

指が止まる。


何も書けない。


応援の言葉は、嘘じゃない。

でも、今の私が書くと、

どこか、違うものになる気がした。


いいねも、押せない。

スクロールも、長く続かない。


推す場所が、なくなっていた。


あの夜、線を引いた。

正しい判断だった。


でも、その線は、

推しと私の間だけじゃなく、

私と“推し活”の間にも、引かれていた。


誰にも言えない。

分かってもらえない。


推し活は、楽しいもののはずなのに、

今は、居心地が悪い。


私は、スマホを伏せた。


見なければ、楽になる。

そう思いたい。


でも、完全に離れる勇気もない。


推す場所を失ったまま、

私は、どこにも立てずにいた。


好きだったはずの世界が、

少しずつ、遠くなっていく。


それが、

終わりなのか、

新しい始まりなのか。


まだ、分からなかった。

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