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第13話 会わない理由が、見つからない

会うべきじゃない。


頭では、そう分かっている。

分かっているのに、理由を並べても、心は納得しなかった。


危険だから。

迷惑になるから。

もう、終わったことだから。


全部、正しい。


でも、その正しさは、

すでに一度、選ばれなかった。


スマホを置いても、

画面の言葉が、頭から離れない。


「少しだけ」

「顔を見て話したい」


その“少し”が、

一番、信用できない。


会えば、何かが変わる。

変わってしまう。


分かっているのに、

会わない理由だけが、

どんどん弱くなっていく。


外は、もう暗かった。

窓に映る自分の顔が、知らない人みたいに見える。


推していた頃の私。

距離を守っていた私。

何も期待していなかった私。


どれも、もう戻れない。


メッセージが、届く。


「無理なら、言って」

「ちゃんと、断っていいから」


断っていい。


その言葉が、

優しさなのか、

逃げ道なのか、

分からない。


私は、画面を見つめたまま、

長く息を吐いた。


断る勇気。

会う覚悟。


どちらも、重い。


それでも。


「……少しだけなら」


送信した瞬間、

心臓が、強く鳴った。


すぐに、返事が来る。


「ありがとう」

「場所は、前に話したとこでいい?」


前に話した場所。

誰も知らない、曖昧な空間。


選んでしまった時点で、

もう、後戻りはできない。


「はい」


たった二文字。

それだけで、世界が、また傾く。


会わない理由は、

最後まで見つからなかった。


代わりに、

会ってしまう未来だけが、

はっきりと、そこにあった。

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