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第11話 いなかった人になる

名前は、出ていなかった。


それだけが、唯一の救いだった。


でも、界隈は静かじゃない。

むしろ、静かすぎて、怖い。


否定が出た。

公式から、簡潔なコメント。


「事実ではありません」

「誤解を招く行動はなかった」


それで、終わり。


終わったはずなのに、

私の居場所だけが、なくなっていた。


グループチャットは、更新されなくなった。

誰かが抜けたわけじゃない。

ただ、動かなくなった。


私が発言しないから。

私が、説明しないから。


空気が、私を消した。


タイムラインを流れる言葉。


「やっぱりデマだったね」

「一般人かわいそう」

「でも、距離感はさ……」


“一般人”。


それは、守るための言葉でもあり、

切り離すための言葉でもある。


私は、どこにも属さなくなった。


推し活仲間でもない。

推しの世界の人でもない。


ただ、話題の外側に立っている。


現場に行く気力は、なかった。

画面を見る勇気も、なかった。


推しの笑顔を見るたびに、

「なかったこと」にされた自分が、

はっきり見えてしまうから。


連絡は、来なかった。


あの人からも。

事務所からも。

誰からも。


それが、正解なのだと分かっている。


関係はなかった。

だから、切る必要もない。


最初から、

いなかったことにすればいい。


ベッドに横になって、

天井を見つめる。


推していた時間が、

遠い夢みたいに感じる。


選ばれたと思ったのは、

私の勘違いだったのかもしれない。


ただ、通りすがっただけ。

偶然、近づいただけ。


そう言い聞かせても、

胸の奥は、空いたままだった。


いなかった人になる。


それが、

私に与えられた、結末だった。

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