第三章 だって楽しいもんな、分からせるの 1
意味が分からなかったんだ。
姉ちゃんは、クラスの中で空気のような存在だったらしい。
とにかく存在感が薄かった。それだけ、俺に語ってくれた人がいた気がする。
どうやら、無視だったらしい。
本当に、それだけ。クラスのみんなから、何故かないものとして扱われて。
どうしてか、教職員人からもないものとして扱われて。
空気のような扱いを、誰が始めたかは分からない。
無視だ。だから、暴行ではなかった。
恐喝でも。
窃盗でも。
器物破損でもない。
ただ、名誉棄損でもって、姉ちゃんは死んだ。
許せなかったのは、姉ちゃんが死んでからの対応だった。
無視されて死んだ姉ちゃんは、死んでからも存在していなかったかのように扱われた。
どいつもこいつも、無視した自覚はあった癖に。
姉ちゃんがいたことを、確かに認識していたくせに。
その時だけ──姉ちゃんの事を聞かれた時だけ、きれいさっぱり忘れた振りをして。
だから、教育委員会に報告すら上がらなかった。
〝そんな生徒はいなかった。だからいじめも起きていない〟
この一点張りだった。
当然母さんも父さんも俺も怒った。
そんなはずはないと再調査を何度も依頼して、しかし受理されるたびに何の情報も出て来なかった。
どうしてだ。
どうして、姉ちゃんはないものとして扱われた?
どうしてみんな、姉ちゃんのこと、知らないなんて言うんだ?
おかしいだろ。
姉ちゃんは確かに俺達と一緒に住んでたのに。
食事も一緒にした。
買い物だって家族四人で行った。
旅行だってしたし、一緒に遊んだ記憶だってある。
まだ悲惨ないじめが報告されるだけなら、粛々と法に則って処罰すればよかった。
でも、それすらない。
ない。
ない。
なにも、ない。
その学校で、姉ちゃんが生きた痕跡が。
塵すらも、出て来なかった。




