#拙者 2
また少し下品かも。欲望を曝け出しているように見えるかも…いや否定出来ないや。最後まで欲望たっぷりで駆け抜けてみるので良ければ付き合ってください。
久々にとんでもない安眠をした。もうこのまま起きなくてもいいやと思えてしまうくらいに。
散々悪夢を見続けてきたんだ。夢だと思いたい現実に、驚愕と絶望を繰り返しながら何度目を閉じたって眠れる訳ない。移り変わる体はどうあれ精神的には疲れているんだ。それがどういう訳だろう凄く深く眠れたんだ。
理由は分かっている。拙者も思春期のニッポンダンジなんだ、慰めてしまえば幾分スッキリするだろう。思い返せばようやくまともな女の子と話したんだ。話して…あんま無いか。それでも、理由も分からず殺してきた奴か理由が分かって殺しにきた奴に比べればまともだろう。拙者に関わる異性殺意高過ぎでは。
呆れてため息を吐き寝返りをうつ。うった先に柔らかいものが当たった。なんだろう、ほんのり暖かくて良い匂い…
「ん…あ…おはよ…」
喋った。目を開けるより先に体が飛び跳ねた。まともな女が、一緒の布団で寝ていたのだ。まともじゃなかったのか。
「驚かしたのは悪かったけどそんな離れないでよ ちょっと傷つく」
威嚇する猫のように睨む。目が慣れてくると青くて美しい髪に寝癖が付いていて何とも可愛らしい。
それが推しに対するファンの感想で良いのだろうか。アイツだったらこんな状況で何を考えるだろう。きっと驚いたりせず冷静に会話に入るのだろうか。どっちにしてもキモくないか。
「あの後冷静になって まずは謝ろうと思ったんだけど…見てはいけないものを見てしまった訳でして」
あの後と言うと…察して顔が青ざめる。見られてたのか。事故とはいえ恥ずかしいし悲しいし理不尽に怒りを覚えるしちょっと興奮するし。そんな自分がキモくてとても情けないという感情に終着した。
「前はボクなんかに興奮する素振りなかったからびっくりして…でも君には沢山助けられたし 望むのならそういう事になっても…嫌じゃないっていうか…」
なんだこの可愛い生物は。頬を赤らめながら指をいじいじしているこの生物は。殺されたり入れ替わったりで絶望していた拙者にこの生物は眩しすぎる。
「だから…教えて?」
耳元で囁かれる。また、男としての生理現象が浮き上がって来たところに次の言葉で胸を撃ち抜かれた。
「君は…誰?」
誰って…拙者は…
「憑依してるんだよね 君はもう昨日の優しかった君じゃない」
まさか拙者が入れ替わった事を分かっている?何も説明していないのに、さっきまでの興奮が嘘のように冷めてしまった。この現象を理解しているのならまた同じことを繰り返すのではと真っ先に思いついたからだ。
「せっ 拙者をどうするつもりでござるか!」
やっと出た叫びは思いもしない音量で、サファイアを驚かせてしまった。
「どうするつもりはないよ ボクは唯一の理解者かもしれないから」
「どういうことだ!?」
「声でかいなぁ ボクも同じなんだよ この体に『憑依』してる」
同じだと?入れ替わる現象の事を『憑依』と言い切っている。もしこの現象に詳しいのなら悪夢をどうにかしてくれるかもしれない。拙者は希望を感じると、勝手に顔がニヤけてしまった。
「ボクも君も『ごーすと』なんだよね 人は死んだら幽霊になることもあるでしょ?」
肯定を求められても、幽霊に会った事なんて記憶に無い。呆然とした顔で理解を整理しているとそのまま説明が続く。
「死んだ時に無意識でも感謝と謝罪しなかった?」
感謝と謝罪…死んだ時なんて必死だし何を考えたかなんて…
「ありがとう…ごめん…」
思い出した。呟くと同時に涙が込み上げてきた。サファイアが優しく抱擁してくれる。
「ごめんね辛い事思い出させて その言葉が憑依のトリガーなんだ」
無意識に呟いていた、この思いが原因だったんだ。
「全部…拙者が悪かったんだ…」
理解して、絶望と怒りが込み上げてきて、涙が止まらなくなる。サファイアはそんな拙者の頭を優しく撫でてくれた。
「そんなこと無い 誰も悪く無いから」
涙が乾き切るまで、健全な意味での慰めを感謝しながら堪能した。
お陰様でやっと冷静になれた。好きな人に見せるには情けないほどぐしゃぐしゃな顔でサファイアを見つめる。ファンとか推しじゃない、拙者はこの子が好きだ。愛してしまった。この雰囲気を壊してしまうかもしれない、その唇にキスがしたい。目を動かしていると何かを察したのか顔を近づけてくるサファイア。心臓がバクバクと脈うつ。その音しか聞こえない空間で目を瞑り、こちらも顔を前に突き出す。
…触れてしまった。唇同士が。俗に言う、キスをしたのだ。心臓が更に大きく動き出して、死んでしまうのでは無いか思ってしまった。今まで不幸に刺されて殺されたんだ、幸せに死んでしまえるのならもう良いんじゃないかな。柔らかい唇と少しだけ漏れ出す甘い吐息に、全力で集中していた。
コツンと、頭に冷たいものが当たる。なんだよ良い時に、余計な想像させんなよ。
本当に余計な想像でいいんだよな。当たったものが何か予想する。刃物じゃなさそうだ。なら安心だ。そうだよ、こんな流れ。まさかまたそんなこと
「バンッ」
鼓膜をぶち破る位の音が鳴り響く。一瞬だけ火の匂いがした。一瞬で、脳が揺れて。わかんなくなって。
「はー気持ち悪かった」
なんで…そんなこと…
「早く死んでよね そして僕を殺してよ」
…
「ありがとう ごめんね あはは」
あっちゃーまたダメでした。下品に捻くれてるのはあの子か、はたまた僕か。
やっとゴール見えてきましたけどあと何話やるんでしょう。同シリーズの他話も更新したいのでそろそろケリ付けたいなと思っていたり思ってなかったかもしれなかったり。あはは




