#私 1
このペースだと思ったより長くなるな。まぁマイペースでも続くのが大事って事で多めに見て下さい。
私が殺した。私だった人を。私はもう死んでいて、死んだはずの「俺」が私になっている。
全然飲み込めない。もう一度寝転がり、赤とハテナでぐしゃぐしゃになった頭を整理する。悪い夢だと思って無理矢理寝ようとしてみても、いつもと違う心拍や体温に違和感を感じて寝れない。男女の体が入れ替わる話なんて本の中だけで良かったのに。
(入れ替わった…なら私が見ていた彼女は?)
この体の主は。入れ替わったのなら…。見ないようにしていた死体の方に恐る恐る視点が向かう。さっきまで生きていたはずの残骸は、不思議と人に見えなくて。死んでしまうことに対する恐怖が募っていく。
彼女は死んでしまった。私を巻き込んで勝手に、訳も話さず目的を達成されてしまった。そこまで死にたくなるような彼女の人生を、引き継がされたのか。
時間が経ち、状況を理解し始める。いくら考えても彼女は生き返らない。それより目の前の将来をどうするのか考えなくては。側から見れば私は人を殺していて、この状況でしれっと帰るのか。そもそも帰る所はどこなのか。
…何も希望が無い気がしてきた。せめてこの状況を理解してくれて相談に乗ってくれる奴は居ないだろうか。蝿が集る、ゴミになった物のポケットから携帯を取り出す。親友から通知が来ていた。内容が気になるがロックが掛かっていて見れない。顔認証…目が抉り取られた顔でいけるはずも無く、パスコードも思い出せなくて絶望した。
屋上の扉が開く音がした。誰か来たのか、この現場がバレてしまう。どうすればいい。私は、どうすれば
「あっ…ああ…!」
情けない声。だが知っている声で。
「どうして…なんで…」
私の親友が来てくれた。ゴミに向かって、泣いている。
それを殺したのが私で、私は入れ替わっていて、説明…納得して貰えるとは思えない。本気で泣いてくれている親友をただ茫然と見ることしか出来なかった。
「…貴様がやったのでありますか」
こちらを見ずに話しかけてきた。声だけなのに怒りが滲み出ている。私はどう答えれば丸く収まるか分からなくて、でも何かは伝えないといけない焦りで言葉に聞こえない、小さく叫ぶように口を開けていた。それを見て親友は涙で汚い顔のまま、固まった表情で何を訊かなきゃいけないのか考えていた。
「…拙者の推しは?」
何故。真剣な表情でこんな状況で出てきた言葉がなんだそれ。思わず反射的に答えてしまった。
「さ…サファイヤ!」
「サファイ『ア』だエアプが!!」
怒られた。私が悪いのかな。
「サファイアという神について語る必要がありますな!まずはサファイアのアイドルになるまでの過程を説明しなくては!」
そこから親友は熱い推しの愛を語り続けた。本当に好きなものってめっちゃ早口で説明しちゃうよねって思いながら聴いていた。死体と加害者と推しを語るドルオタ。こんなシュールな光景になっている事を把握して、ちょっとニヤついてしまった。
「失敬 しかし状況は飲み込めましたぞ」
そういやこの状況説明してないけどどこまで理解したんだろう。
「貴様の中身は拙者の親友!彼女は入れ替わった先で死んだ!」
すごい。説明したかった事全部理解してくれてる。飛躍しすぎて少し引く。
「そしてその親友を拙者が救う!そうして欲しいのであろ?」
先まで考えて…溢れる涙が地面に滲んでく視界の中首を縦に強く振った。




