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ごーすと  作者: らゐをふ


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1/7

#俺

この話には少しショッキングな箇所があります。苦手でも読んで欲しいけどもし嫌な気分になったら好きな事して回復してね。

 長い夢を見ていた。辛くて悲しくて救われない夢。もう忘れているのにまだ泣いていた。


 放課後。唯一喋る親友は欠席で。授業をまともに受けるほど真面目に生きてないから、本を読むか寝ているかの一日。誰も喋りかけてこないのはきっと、俺がきっとかっこいいからだろう。高校生になって見た目を自分の好きな本の主人公に寄せる。俺なりの高校生デビューだ。周りに同じ考え方をする奴は居ないようで、俺だけ変に浮いてしまっているようにも見えるが決してそう言うわけではない。はずだ。

別に寂しいわけでは無いのだが、せめて、誰か起こして欲しかった。帰る時間から4時間経っている。静かだし暗い。さっきまで悲しくて泣いていたのに寂しさで更に泣く。帰ろう、涙を袖で拭いながら教室を出た。

 長い階段を降りていると他の足音が聞こえてきた。教師か警備員だろうか。顔を合わせると気まずいだろうとなるべく下を向いて歩いていた。早足で駆け上がっていく影が横を通り過ぎていく。スカートをはためかせながら。

 こんな時間にまだ他の生徒が居た。しかも帰るのではなくどこかへ向かっている。忘れ物だろうか。俺は無性に気になってしまった。だって誰も居ないであろう学校で偶然すれ違った異性。本で憧れていた「青春」があるかも知れない。俺はひっそり足音を忍ばせて、その青春を追いかけてみる事にした。

 どこまで登るのだろうか。生徒の禁止領域以上に来てしまっている。屋上だとしたら鍵が掛かっているはずだし行き止まりになるだろう。もし目が合ってしまったら何て言おうか。うまく話せるのだろうかと考えていたら階段を登りきっていた。屋上が開いているのを初めて見た。誘われるよう向かうと綺麗な夜空が広がっていて、こんな所でラブロマンスがある本を思い出して、彼女がフェンスから体を乗り出していた。

「待って!」

 辛うじて叫んだ。飛び降りようとしていた彼女をどう止めればいいかわからなくて、肩を覆うように強く抱きしめた。

 一瞬驚いた表情をして彼女が俺を見る。舌打ちをしてから投げるように言った。

「なんだよ 誰だよ」

「君こそ誰なんだよ!」

 お互いに問い掛けて、お互いに不思議な顔をした。一旦フェンスから離れようと彼女を持ち上げようとする。叩かれる。それでも話してくれるのかこちら側に戻って来てくれた。

「なんで止めたの」

「自殺するのを黙って見過ごせるかよ」

「それが赤の他人でも?とんだお人好しだね」

 今が他人でもこれから仲良くなれないだろうか。相手は怒っているのに俺は胸をときめかせていた。

「だったら!なんで死にたいのか話してくれよ!俺が生きたくなるよう協力する!」

 考えた末の一言だ。好きになってしまったのに死んでもらっては困る。

「あんたに私の何が分かるの」

 激昂の表情。言葉を間違えたらしい。これ以上会話するのも自信が無くなってきたので情けないが一旦退散しよう。

「ごめん でもまた君と話したいから生きていて欲しい」

 そう告げて彼女に背を向ける。この後彼女は死ぬかも知れない。そしたらなんて情けないのだろうか。階段を降りながらまた泣いてしまう。足元が見えなくて何度も階段から転げ落ちた。痛みが悲しみを誤魔化してくれるようで、この時ばかりは転ぶのも悪くないと思った。


 全身が痛くて暫く学校に行かなかった。怪我のせいにはしているが、あの子がどうなってしまったのか怖いのが本音だ。俺の人生で一番情けないターニングポイントになるのは確定だな。せめてこの事アイツに話してみるか。ずっと俺を心配して毎日チャットしてくれる唯一の親友。「拙者」と書かれたアイコンをタップして通話をしてみる。

「久々に声が聞けて嬉しいですぞ!元気してましたかな!」

 まだ俺は喋ってないのだがこのテンション。安心感がある。

「心配かけてごめんな 実はお前が欠席したあの日に色々あって」

 事の顛末を若干盛りながら伝えた。親友はフィクションは楽しいものだと笑っている。でもあの日を嘘だと思いたくない。あの子がもう居ないのならもうこの青春は終わってしまうがもしもう一度、話したり出来ないものか。

「しかし学校で飛び降りなんて起きたら周りでニュースになるでござろう そんな噂全く聞いてないでござる」

 コイツは推し一筋のドルオタなのだが何故か友人は多い。羨ましい。俺も多い中一人の友人扱いかも知れないが他に開いてしてくれる人もいないから勝手に親友だと思っている。

「噂が無いなら生きているはずだよな!ありがとう俺の生きる希望!」

「その子に向かってなのか拙者に向かってなのか絶妙に分かりづらいですな それではそろそろサファイア殿のゲーム配信が始まるので失礼仕る」

 楽しい通話だった。感謝としてそいつの推しである「サファイア」というアイドルの配信を見てやろう。アイドルがゲームしてて何が面白いんだろうか。気づけば寝落ちしていた。


 体もある程度動く。後は彼女に会う勇気と探す根気。夢見ていた青春を現実にするのだ。教室に入り親友に挨拶と感謝を済ませ彼女を探しにいくために教室を出た。

「あいつ授業は意地でも受けぬつもりでござるか」

 校内を歩き回るがこれと言って当てはない。あるとすれば屋上だろうか。あの時は鍵が開いていたが昼は閉まっているだろう。ダメもとで扉を開ける。開いたよセキュリティ甘くないか。そして先客も居たようで、あの時は暗くてよく見えなかったシルエットがはっきりと見える。フェンスの内側で空を見ている彼女が居た。

「まだ生きてたんだ」

「やっと来た というか結構失礼だと思う」

 生きててくれてありがとうをどうにかしてカッコよく言いたかったのにまた間違えてしまった。

「話すの苦手でごめん」

「また謝ってる」

 謝罪しか思いつかない。他のモテる奴ってどうやって気の利いた会話出来るんだろ。俺にも練習させて欲しかった。言葉を選んで口を開こうとした時、先に彼女が言った。

「あれから一回落ち着いてさ これからどうするかこの空を眺めながら考えていたの」

 確かにこの屋上から眺める空はとても綺麗で、広くて、悩みなんかちっぽけに思えるかも知れない。

「じゃあ話してくれよ 君が死にたい理由」

 俺も落ち着いたかもしれない。俺を待っててくれたって事は相談してくれるんだって。そしたらもう全力で解決に行って彼女と楽しい青春を送るんだ。そう覚悟していた。


「ありがとね」

 彼女は鋭利なハサミを持っていた。なんで気づかなかった。

「ごめんね」

 俺は近づいて来る彼女の顔から目が離せなかった。謝っているのに笑っている。笑っているのに泣きそうで。神秘的で美しいと思ってしまった。腹に何かぶつかっている。確認してみると彼女のハサミが、俺の腹を刺している。

「え…?」

 ハサミを抜く。じんわりと血が出てくる。痛くて、熱くて、なんで?

目にハサミが入って来た。目玉を通して頭に響いて、痛いのに瞼を閉じれなくて。熱い涙がドクドクと湧いてくる。

 俺が悪かった。謝るから。だからなんで、俺は自殺を止めようとしたのに

「ごめんね ホントにごめん」

 どうして俺を、ころすの。

 首を刺された。視界が霞んで、溶けるように沈んでいく。何も見えなくなっても、痛みが分かんなくなっても、まだどこか、刺されている。刺されて…




 目を覚ました。夢か。酷く汗をかいている。死んでしまう悪夢を見ればそうなるのも無理はない。しかし空がとても綺麗で、無限に広がっていて…床が硬い。なんで屋上で寝ていたのだろう。まるで夢の続きのような。

カラン

 手元に何かぶつかった。ハサミだ。真っ赤に染まっていて、先に肉片のようなものが付いている。

「私…何を…」

 私?違う私は…

 体を起こすと、血みどろで穴だらけの男性が居た。それは、さっきまで私だったような。

 顔に手を当て、ゆっくりと下を向く。その体は、さっきまで「俺」を刺していた彼女だった。

「ごーすと」は今の所全5話くらいを予定しています。そしてその予定話が所々センシティブです。なるべく不快にならないように表現を考えますのでお付き合いしてくれると嬉しいです。いっそ不快にマックスベットする欲望もありますが頑張って抑えておきますね。

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