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【第8話:魔界について】

魔界──それはこの大陸の最も北に位置する過酷な地だった。噴煙を上げる活火山がいくつもそびえ、蒸気が吹き出し、時には溶岩が地面を焼き尽くす。深い森が広がるその土地は、耕作が難しく、外部からは恐れられていた。


その魔界に住まう魔物たちは、人間とは異なる進化を遂げていた。彼らは見た目こそおどろおどろしいが、実際には人間と大差ない知性と感情を持っている。しかし、その数は少なく、必ず一人の魔王によって統率されていた。


魔王は支配性向が強く、人間の住む土地を目指して侵攻を繰り返す。各国の騎士たちが軍勢を組んで魔界の軍団を撃退しても、魔王を倒さねば根本的な脅威は終わらないのだ。だから人間は、勇者を魔王城に送り込み、元栓を閉めるように魔王を討つことを目的としてきた。


ところが、最近の話は違っていた。


村の端の小さな家に暮らす勇者リオの母は、魔王と頻繁に伝書魔鳥を介して連絡を取り合っているという。

さらに彼女が村の人々や出入りする商人に話す内容は驚くべきものだった。


「この間、魔王城に行って魔王に会ってきたの。現魔王は……ただの大きな犬よ。人類に敵対しているどころか、愛嬌があって、親しみやすさは抜群だったわ。」


村人たちは半信半疑で耳を傾けた。魔王が大きな犬?それも人間に敵意を向けていない?そんな話はこれまで聞いたことがなかった。


しかし、勇者の母親が実際に見て来たというこの話が国内外に広まるにつれ、人間側は新たな勇者を魔王城に送り込むことに消極的になっていった。


どうやら風向きが変わり始めたようだが、話題になっている当の魔王まくはといえば、今日も大きなあくびをしながら「腹が減ったなあ」と一人で呟いていた。

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