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【第42話:魔鉱石を探せ、三度目】

朝もやが立ち込めるなか、秋田犬の魔王まくと勇者リオは、廃坑遺跡を再び訪れていた。

辺りには二人以外の気配はない。


「見て、まく……あれ……」

リオが指差した。


巨大な円形扉のわずか十センチほど開いている隙間から、何かが這い出していたのだ。

まくとリオは、警戒しながらその隙間へと近づいた。


「見ろ、これ……」


まくが唸るように言った。

そこにあったのは、土でできた、けれど金属のように固いものが一つ。無惨に扉の外に転がっていた。


「まく、この形……見覚えがある。これって……」


「ああ、こいつは――ゴーレムの指だ。」


折れた指の下には、黒紫に光る鉱石が三つ。


「これ、魔鉱石だ!」


二人は同時に顔を見合わせる。


「ということは……この扉の向こうは、魔鉱石の採掘場なんだ!」


「この三つがあれば、ゴーレムを三体動かせる!」


「そしたら……ゴーレムに扉を開けさせられるかも!」


「よし、善は急げだ、リオ!」


まくとリオは駆け出し、魔王城の玉座の間へ戻ると、まくは玉座に刻まれた魔王の紋章に前足で触れる。

玉座の前方の床が、音を立てて左右に開き、地下へ通じる階段が現れた。


地下のドームには、起動を待つ五十体のゴーレムたちが整然と静かに並んでいた。


「いくぞ……」


まくが口にくわえた魔鉱石を手近なゴーレムの胸に押し込む。リオも続けて、その隣のゴーレムたちの胸に魔鉱石を押し込んだ。

ゴーレムたちの目がぼんやりと赤く灯る。そしてゆっくりと、重い体を軋ませながら立ち上がった。


「魔王が命ずる、円形扉へ向かえ。」


魔王まくの号令に、ゴーレムたちは無言で歩き出す。ズシン、ズシンという足音がドーム内に響く。


まくとリオはその後を追った。ドームの奥にある、巨大な扉の前。ゴーレムたちはそこで立ち止まり、ゆっくりと手を扉にかける。


ミシミシ……ギィィ……


重い音を立てて、扉が開く。ゴーレムたちは扉の外へ出ていく。まくとリオも続いた。


扉の先には、ひんやりとした暗闇が広がっていた。静まり返った空間に、二人とゴーレムたちの足音が響く。

遠くにぼんやりと明かりが見えた。


やがて辿り着いたのは――三メートルはある円形の扉──それが、十センチばかり開いていた。

そして扉の前には、上半身だけとなった無残なゴーレムの残骸。


「なんだよ……ここ、ゴーレムがいた地下ドームの入り口だったのかよ……」


まくは悔しさを隠せず、しょんぼりと首をうなだれる。


「でも、ゴーレムが新たに三体も手に入ったんだよ?地面を掘るとか、使い方次第では大きな戦力になるよね。」

リオが少し微笑みながら慰める。

 

「それに、廃坑跡だって、十分に探し尽くしたわけじゃない。」


まくはしばらく沈黙していたが、やがて大きく頷いた。


「そうだな……よし、明日から仕切り直しだ。ゴーレム使って、掘って、掘って、掘りまくろう!」


まくとリオは、新たな希望を胸にして魔王城へと戻っていった。

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