【第40話:ゴーレム起動】
ひんやりとした空気に、微かな振動が混じったのは、ほんの一瞬のことだった。
――ギギギ……ギィイ……
静寂を破るように、ゴーレムのひとつが、まるで目覚めるように動き出したのだ。
鈍い音を立てながら、ゆっくりとその首を回し、真っすぐリオの方を見つめてくる。
「……動いた!? な、なんで!?」
ゴーレムはゆっくりと、関節を軋ませながら立ち上がっていく。
そのとき―リオの懐で何かがジリジリと微かに振動した。
慌てて取り出すと、それは、数日前に魔王城近くの廃坑で見つけた小さな魔鉱石だった。
それが今、まるでゴーレムと共鳴するように震えている。
「リオ、離れろ!」
魔王まくが叫んだが、その言葉よりも先に、ゴーレムが重たい足を引きずるようにして、リオのほうへと巨大な腕を伸ばした。
まるで魔鉱石を求めるかのように。
「うわっ、やめろっ……!」
恐怖と直感に駆られたリオは、とっさにその魔鉱石をゴーレムに向かって投げつけた。
鉱石は宙を舞い、ゴーレムの胸部に当たったかと思うと、そのまま……吸い込まれるように体内へと沈んでいった。
すると次の瞬間——。
鈍い音とともに、ゴーレムの身体に淡い光が走った。
目の輝きが一瞬強くなり——そして、すとんと膝をついた。
まるで臣下が主に忠誠を誓うかのような姿勢で、魔王まくの前に頭を垂れる。
「……これは……?」
まくとリオが顔を見合わせた。まるで無言の会話が交わされるように、彼らの思考は一つにまとまる。
「魔鉱石が……ゴーレムの動力源なんだ。」
リオの声にまくは頷く。
「それに、ぼくに対しては完全に従順のようだ。」
「じゃあ……もっと魔鉱石があるなら……」
リオの言葉に、まくはにやりとした。
「そうだ。他のゴーレムたちも全部、ぼくの思うがままに動かせるかもしれない。」
まくは地下に並ぶ他のゴーレムたちを見渡す。もし、すべてのゴーレムを起動できれば、大きな戦力にもなる。日常の雑用だって任せられる。干し肉の運搬だって可能だ。
「……夢が広がるな。ところで魔鉱石は、どこで拾った?」
「城の外の、古い廃坑跡だよ。探せばもっと見つかるかも。」
「よし。明日行ってみよう。」
魔王まくは、リオと一緒に魔王城の近くにあるという古い廃坑跡へと向かうことに決めた。




