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【第1話:新たな飼い主、殴り込みに来る】
「ここが……魔王城……玉座の間!」
玉座の間の巨大な扉を押し開けて現れたのは、一人の勇者だった。
金髪碧眼、剣を携えた凛々しい青年。その名を――リオ=シュピーゲル。
「魔王! 世界に混沌をもたらす者よ! その首、もらい受ける!」
「ちょっと、待て!」
「なっ!? 犬が、しゃ、喋ったーーー?」
まくは玉座の上で大きな伸びをすると姿勢を正し、悠然とリオを見下ろす。
「人間よ。君は、良い目つきをしているな!」
「えっ……あ、ありがとう」
「ぼくの名はまく。魔王だが、この世界に数日前に来たばかりで、君と戦うつもりは全くない」
まくは玉座からひらりと飛び降りた。
勇者リオの前に歩み寄ると、巻き尻尾を軽く振りながらまっすぐ見上げる。
「ぼくは腹が減っている。とりあえず、何か食べるものはないか?」
「え?……あ、うん。じゃあ一緒に干し肉、食べようか」
一時間後。まくの虎毛に顔をうずめるように眠っている勇者の姿があった。
その日以降、リオは魔王を討つことをやめ、新たな飼い主として魔王城に住み着いた。