表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
答え合わせ  作者: 恒吉拳
1/1

都合が悪くなると黙り込んで、娘たちが助けてくれるのをジイっと待っている。そんな親父のことを納得できないで、あれこれと考えている。親だから仕方ないよな。と納得するしかないのだろうか。

妹が6人と1人の弟の8人兄弟の私。オンボロアパートに住み付き兄弟が増えるたびに、増していく貧しさ。大工を生業にする親父は、時に仕事が無く、働いても当てにしたほどの稼ぎもなく。貧乏なのに、もう、わかりきってるのに、なぜ子を増やし続けるのか?そんな親父を疎んじてきた私は、人として、男として、親父のことを考え始める。

50歳を過ぎ頃から、自分の年齢に、親父の年を重ねていろいろなことを思い出すことが多くなった。

例えば、私は今62歳だから、親父が62歳の頃と言えば、私は36歳で、小学校に通っている娘が2人、25年ローンを組んで古家を手に入れた年だった。

親父が家を買ったのは、私が19歳の時なので、45歳となる。それまで住み続けてきた、大阪市内のアパートを『建て替えるから』と、追い出される様に出ていった。その時には、高校を卒業したものの、働きもせず、遊んでいる長男の私を筆頭に、妹が6人と弟が1人の8人兄弟で10人家族の落ち着き先を探す、と言っても、そうそう簡単には行かなかっただろうと想像できる。仕事の休みの時には、大阪府内の色々な物件を不動産会社の人と見に行っていた様だが、それまで(それからもだが)貯金などあるはずもなく、その日の生活費にも事欠く始末だった。家族10人、不動産会社の担当者の人も、よくも付き合ってくれものだと感心する。結局は、大阪のベッドタウンに10坪ほどの中古物件を買うことになるが、所得申告など行ったこともなく、ローンもそう簡単には下りない状態で「なんなら私が保証人になるから、どうか、ローンを通してやってください」と、これまた、担当者の方の『押しの一手』が効いたのか、松原市にある、地元の地銀でローンを組めることになった。だが、最低限の経費などの現金が必要で、慌てて千葉で会社員をしている叔父さんにお金を借りることになり、それでなんとか賄うことになり、信仰していた、宗教仲間の男性たちが引っ越しを手伝ってくれて、なんとか、大家族は大阪市内から松原と言う田畑に囲まれた地に移住できた。

とは言え、その物件は元々、大工さんが住んでいて、棟続きの小さな家を、改造して部屋数を増やした違法物件と言えばわかりやすいだろうか、私が1部屋を独占して広々と使い始めたので、他の妹弟たちは2部屋にひしめきあって住んでいた。まあ、そんな私たち家族を、近所の人たちはどんな目で見ていたのか?と想像する。

 19歳の私は全く仕事をする気もなく、大阪社会人サッカーに入れてもらってボールを蹴っていた。中央卸売市場でバイトをしてお金を稼いでいたり、元々大した金額でもないので、すぐに一文無しになっても、悪いを考えることもなく、家でタダ飯を食べてそれなりに生きていた。私はどう言うわけが、そんな生活に不満などなかったような気がする。そして、次の年の夏に親父に「俺も大工になるわ」と親父について大工見習いになった。「お前が手伝ってくれたら俺は2倍稼げるわ」と喜んでくれたが、当の本人は全く仕事をする気もなく、何かと理由をつけてはサボることばかり考えていた。その1番の理由は稼ぎが少なかったことだろうか。道具をを持っていかなければならないので、車はバンと言って乗用車の長いような車で、それも20万円ほどの最低レベルの中古車で、その上にローンを組んで。ガソリンはいつも「二千円でレギュラー」とか千円の時もあった。万年調子が悪くて、ブレーキ辺りから煙が出たり、ラジエーターからの水漏れで「買ったばかりやのに。こんなんじゃ困るやろ」と販売店に何度も行って修理をしたり注文をつけていた。一度、まだ家まで10キロほどの帰宅途中で赤信号で止まったら、そのまま動かなくなったので、路肩に車を寄せて、タクシーで帰ったこともあった。タイヤもパンクをすると、家の近くのガソリンスタンドに持ち込んで修理をしていたようだが、「また、再生タイヤはないんか」と言っているのを聞いたことがある。要するに新品と交換した、その使っていたタイヤの薄くなったゴムの溝を再度掘ったタイヤらしい。常時そんなものを装着して走っているのだからすぐにまた、パンクをするのだった。そんな状態なのに、それまでの二十年近くの間、両親はある宗教団体の信者だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ