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嫉妬心

作者: 冬夜雨

いらいらしたときは硬いものを噛みたくなる。

夏だったら氷だったり、冬だったら飴とかの固いお菓子だったり。


がりがりとかみ砕く食感と音にストレス解消を期待する。

それをストレスのためっていうのは気が付かれない。


でもその噛む癖を抑えられないときがたまに、ある。



「…痛、」


「あ、……加減出来てなかった、ごめん」


「ん、へいき、」



たまにやらかしてしまう。

たとえ酔っていたとしても彼女に対してのみだけど、薄く歯形がつくのに安心してしまう。

身体を重ねる度に幸せを感じるけど、過去への嫉妬は隠せない。

だからこういう行為のときにきみを噛んでしまう。

無意識下で。今は首の付け根。

このあいだは肩。その前は背中。


血が滲むようなことはないけど、よくない傾向だって自分で思う。


ぼくのまえに誰かほかのやつが触ったって考えると腹立たしい。

変えれない過去だから言えないけど。


言わないけど、いつかこの嫉妬心もなくなるのかな。

ぼく自身のことながらそんな未来はなさそうなのも困る。

過去は過去ってわかってるのに。

でもまっさらの誰かより今現在構成されてるきみがいい。

過去込みでいまのきみだから。



「しばらく痕になっちゃったらごめんね」



ちゅ、と歯形をごまかすように唇をのせる。

そのまま目を合わせて口を重ねて。



「好きだよ」



好きだから遠い過去にも嫉妬する。


ぼくはこんな風にこころが狭いから、きみが幸せになるのにたぶんぼくを必要としない。

本当の幸せを願うならぼくはいないほうがきっといい。傷つかないから。

だからこうやってためしちゃうのかも。……最低だなぁ。



「ごめん」


「愛情表現、でしょ……?」



消え入りそうな細い声。

でもそれはあまりにもぼくに都合がいい言葉で。

本来ぼくの噛む理由なんかどうせばれない。

これは苛立ちからくるもの。でもきみに対してなら元は嫉妬。

それなら。



「愛情表現……うん、そうかも」


「それなら嬉しい」



ふふ、と笑うきみに驚いた。

独占したい欲なのかもしれないしぼくだけが傷をつけてもいい。そういうわがまま。

それを受け入れちゃうわけ?


ぼくの裏にあるものはぼく以外にばらさない。

完全に隠し通す。



「噛まれて嬉しいのはまずいと思う」


「噛むのが好きなのもまずいと思います……」


「破れ鍋にとじ蓋?」


「それいい意味じゃなかったはず」


知ってるけど。ぴったり収まってるならバランス取れてる。

それならぼくの嫉妬心も受け止めてね。


安心してきみを噛んでぼくのしるしを残そう。

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