冒険の予感?
「そういえば、この辺で面白いモノを見つけたんだ」
「面白いモノですか?」
僕はすっかりキャラバンのオッチャンと意気投合してしまった。
そんで、買い物そっちのけで世間話が始まったのだが……。
オッチャンがなにやら興味深い事を言い出した。
「そういや、キャラバンの道中で文明の遺跡を見つけたんだ」
「文明の遺跡……まだそんなものがあるんですね」
「遺跡の場所の情報、興味があるかい?」
「いくらです?」
「へへ、わかってるじゃないか。だがこれはそうだな……この老いぼれは兄さんのことが気に入った、サービスにしておくぜ」
「本当ですか?」
「おうともよ。まあよくあるだろう? 『お試し品』てやつだ」
「なるほど、これが気に入ったら次もいかがですか、と」
「そういうこった。ちゃんと買ってくれよ?」
「それはもちろん!」
そういっておっちゃんは僕に地図をくれた。
ふむむふ、他のコロニーの位置関係をみるに、そんなに遠くないっぽい。
「どうも! よい旅を」
「おまえさんも、安全に気をつけろよ?」
キャラバンの人たちに挨拶をして別れた後、僕は畑に向かうことにした。
畑の作業がどうなってるか、ふと気になったからだ。
裏手に回ると、クロとハクは母屋の日陰でぐうすか昼寝していた。
あらかわいい。
クロは箱座りで、ハクはそれに丸まって寄りかかり、静かに寝息を立てていた。
ハクが鼻で息をする度に、クロの冠羽がぴこぴこ揺れている。
仕事を頑張ってくれたし、二人はそっとしておこう。
さて、彼女たちがひっくり返した畑を見てみると、すでに何かが色々植わっている。緑色の草がぶっ刺したようになってるのはきっと落花生かな。
湿った土の部分は……薬草の種をまいた感じ?
ふむ、まだ何も植わってない畝があるな。
ここにオッチャンからもらった種をまくとしよう。
僕は袋から種を取り出すと、一個一個丁寧に畝に埋めて、水をかける。
農業を全く知らないので、これでいいかわからないけど。
まあ、農業がさっぱりな僕でも、アサガオの観察日記くらいの経験はある。
たぶん種の埋め方はこれで合っているはずだ。たぶん。
「何やってんだいアンタ?」
「にょほい!!」
種を埋めてると、背中に声をかけられてビクッとしてしまった。
ふりかえると、そこには両足をピンとコンパスのように伸ばしたギリーさんが立っていて、なにか胡散臭いものを見るような顔で僕を見下ろしていた。
「ちょっとキャラバンの人からおまけをもらいまして」
「おまけぇ? 妙なもんじゃないだろうね」
さすが鋭いわ。しかぁし! それは想定内!
「売り物にならない雑多な種らしいです。お楽しみ袋的なやつですね」
「なるほどね。またなんか変なもんでもアンタが掴まされたかとおもったわ」
ちゃんと理解されてて、嬉しいやら悲しいやら。
しかしこれはニートピアのためでもあるのですよ。フフフ。
「後はこんなものもいただきました」
「地図ぅ?」
「この近くにある、文明の廃墟だそうです」
「へぇ……ずいぶん面白いものをもらったね」
「興味あります?」
「ああ、あるね。そもそも私ら砂エルフは、そういうのを漁るのが仕事さ」
「そういえば最初に遭ったときも、文明の品に興味がある様子でしたね」
「おぼえてたかい。アタシらはスカベンジャーってやつでね……」
ギリーさんは母屋の壁によりかかって、肩で壁を押す。
そして腕を組むと壁と腕その間で胸が強調されて、おお……。
「――? そんな驚くことかね」
「いえいえいえ、どうぞ続けてください」
「……まあ、文明の廃墟にあるガラクタを集めて売る。単純だろ?」
「ええ」
「だけど、文明の廃墟って言ってもピンキリでね。危険な場所、実入りの良さ、そういうのに鼻が利かないと長生きできないのさ」
「この地図の場所はどうでしょう?」
「言ってみないとなんとも言えないけどね。それでもいいかい?」
「ええ、お願いします」
地図を受け取ったギリーさんはしばらく考え込む様子を見せた。
そして――
「9割方、なにかの店だね」
「地図だけでそこまでわかるんですか?」
「ああ、簡単だよ」
「まず古代の道の上にある。そして、私の記憶が確かなら、この周囲に他に廃墟はなかったはずだ。ポツンと立ってる家ってのも考えられるけど、考えにくい」
「自動車かなんかを使って移動する連中が、トイレを使ったり、軽食を取るような場所じゃないかねぇ?」
「おー」
ギリーさんって、自動車のこと知ってるんだ。
この世界の文明レベルがだんだんわからなくなってきたな。
「そんな遠くなさそうだし、行ってみようと思うんですが」
「なら、そこで寝ている連中が起きてからにしたほうが良いね?」
「全員で行くってことですか?」
「ああ。鼻が効くかどうかっていったろ?」
「……危険な場所?」
「だいぶ匂うね。少なくとも銃は持っていったほうが良いね」
「はい。ちなみに、根拠は?」
「簡単さ。ここらはサバンナってより砂漠に近くなってる」
「?」
「アンタだったら、砂漠にそんな手頃な日陰があったらどうする?」
「あー……。マシンガン持っていきますね」
「賢明な判断だね」
砂漠にぽつんとある、涼しい日陰。
そりゃあ、《《ああなる》》よね。
僕は振り返り、母屋の陰で寝息を立てているクロとハクを見た。
ギリーが言いたいのは「こういう事」だ。
「それに畑を作った今、他になにも出来ることもないしからね」
「収穫が始まると、それどころじゃなくなる。行くなら今ってことです?」
「そういうことさね」
よし。冒険の準備……するかぁ!!!




