ランク祭り
本当に凄まじい体験だった。強大な魔物の【気】を取り込むことがこれほどまでに体を抉られるようなものだとは知らなかった。
でも私は乗り越えた。サイエンがいてくれたから。
正直なところ、サイエンは、身体の面では私と比べて強くはない。
だから私よりもきついはずだ。
それなのに必死で励ましてくれた。私を守ろうと手を強く握ってくれた。それがどうしようもなく嬉しくて、心が温かくなった。なんて愛おしいんだろう。
私もサイエンも、無事ランク4になった。ランク4なんて、本当に聞いたことがない。この世に存在すると思っていなかった。
そんな存在に、自分がなった。
何も言われなくても分かる。
今までと見える世界が違っていた。そうか、あの部品を作る工程で角度に変化をつけながら作り上げれば良かったのか。
今なら、こんな風に作るのに。
今なら、こんなやり方でも可能なのに。
今なら、もっと頑丈に作れるのに。
そう思ったら居ても立っても居られなくなった。ランクアップ後の疲れた体が自然と起き上がる。サイエンも同じだった。
私とサイエンが考えていることは同じようだった。
そうだよね、サイエン。もっといいものに改造できるのに、あなたが放置するはずないもの。一緒に頑張りましょう。
でもその前に。お礼を言わなきゃね。
「本当にありがとう!魔物を集めてくるのだってすっごく大変だったよね。でもおかげさまでランク4になれたよ。今ならもっといいものが作れる!」
「いや、みんなには強くなって欲しいからね。勝手にやったことだよ。でも喜んでもらえて良かった。こちらこそ立派な地下帝国を作り進めてくれてありがとう。」
逆にお礼を言われてしまった。それ以上の問答は不要だった。行動で恩を返すしかない。一刻も早く最高の地下帝国を作り上げることで。
私とサイエンはすぐに地下帝国へと戻った。
それからの日々はさらに忙しかった。
地下帝国の全階層の改良作業に加え、シャルルからの大量の黒い箱作成の依頼が舞い込んだ。
今までの私たちであれば到底不可能な作業量だったが、ランク4の力は絶大だった。
それから程なくして、私とサイエンの作ったものが大陸を越えて世界中に普及したことを知った。
昔の私であれば心底どうでもいいことだったが、今は違う。
サイエンとの作品が世界中に知れ渡ることが嬉しかった。
そして時は過ぎ、相変わらず忙しくて幸せな日々が続いていた。
しかしそれをあっさりと壊し得る脅威が地下帝国に迫っていたのだった。




