モグラ
早速、地下帝国を作って欲しいという場所に案内されたのだが。
ルシーが放った一言でその場所が大きく変わることになった。
「うーん。。。ちょっと、ここじゃなくてあっちの方がいいと思う。」
「それは、ルシーの勘?」
「うん。」
「わかった。じゃあここはやめよう。ルシー、案内してくれる?」
「わかった。」
このやりとりに、私はついていけなかった。
すでにここには、様々な鉱石や道具をそろえてくれていた。強い魔物の気配も少ない。作業もしやすそうな場所だなと思っていたところだった。
それがあっさりと、ルシーの勘だけで覆された??
もしこれが他の相手だったら、なにを適当なことを!そう言ってやったに違いない。
しかしこの2人だから、私は特にこの件には触れず、ルシーにしたがって移動した。
興味深い。この2人は本当に面白い。
そんな仲間の2人の期待に応えるべく、わたしはいよいよ作業を開始した。
イメージするのはモグラだ。まずはとにかく掘りまくる。地下に巨大な国を作るのだから、とにかく掘って掘って掘りまくるしかない。
【気術】ランク3によって、魔境の硬い土でさえも簡単に掘り起こすことが出来た。1時間もあればちょっとした地下室の広さを掘り進めることが出来た。
ここらで一旦、【鍛治】スキルの出番だ。【鍛治】スキルの中のひとつに、圧縮の効果がある。
わたしはそれを使用し、掘った土を次々と圧縮していく。
うん、いい土だ。【ドワーフ】の特性で、土や鉱石についてなら手に取るように分かるのだ。エネルギー、養分を豊富に含む理想的な土と言えた。強い魔物たちが蔓延ってきた魔境だからこそだろう。
確かに、考えれば考えるほど、最強の地下帝国をこっそり作るとなれば、魔境しかない。
【ドワーフ】の私を仲間にして、【気術】を習得させ、ランクも上げて魔境に連れてくる。これも含めて2人の計画のひとつなのだろう。
一体あの若き2人には、何が見えているのだろうか。そのあまりの壮大さに、私は1人身震いしたのだった。
「焦る必要はないよ。安全第一にね。」
その言葉通り、わたしは惜しみなく鉱石を使用し、天井を固めていた。
土を掘っては圧縮し、さらにその上から鉱石で固める。その作業を永遠に繰り返した。
【気術】の扱いも、【鍛治】の扱いも、どんどん上手くなっていくのを感じる。
ああ、楽しい。
私はこの日から、モグラになった。




