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回想

わたしはクリート。

【ドワーフ】としては少し特殊な村に生まれてしまったと言っていい。


なぜならわたしの村は、戦闘に特化した教育を施される村だったから。


【ドワーフ】と言えば鍛治であり、生産系の仕事が得意というのが常識であり、私もそう思っている。



わたしは小さな頃から戦闘にはほとんど興味が無く、物作りばかりして遊んでいた。それだけでなく、その物の仕組みや、物質を構成する小さな粒にまで興味を持った。


わたしの好奇心は、何か物を作るということだけに収まらなかったのだ。


好奇心が収まらなかった理由を分析すればそれは、究極の物作りをしたいという根本的な欲求に行き着く。


本当にいい物を作るには、自分の腕や経験だけでなく、その素材に対する理解や、物事の仕組み、理論の研究が不可欠だ。



パパとママは強く、そして優しかった。私が物作りの道に進みたいと言うと、2人とも頷いてくれた。あなたの人生なのだから、好きなことをしてやりたいように生きなさい、と。


そのせいでパパとママは、これまでたくさん村に貢献してきたというのに、村から仲間外れにされてしまった。


それほどまでに、この村では戦闘を重視しているのだ。子供が戦う技術を身につけようとしないのを、黙って見過ごして好きなようにさせるパパとママが許せないということだった。



わたしはパパもママも大好きだったけど、これ以上は迷惑をかけられないと思い、まだ9歳だった私は家を出た。


しかしこの時わたしはまだ気が付いていなかった。自分がどれだけ物作りに固執しているのかということを。大好きなパパとママと一緒にいることをあっさり諦めてまで、物作りの道を極めたいと思っているそのことに。



私がやってきたのは武装国家グレインの中でも鍛治が盛んな街だった。


極端なものだが、今度はその街では、物作りの実力こそが全てであり、年齢も強さも何も関係なかった。



2歳の頃から物作りを始めていた私は、【鍛治】ランク1を習得していて、その実力はすぐに受け入れられた。


そしてその街の【ドワーフ】のおじさんたちは、私にとても良くしてくれた。


まだ9歳の私に、何不自由無い暮らしと、物作りの出来る環境が与えられた。


今までは全て独学でやってきたが、そこには学ぶ題材がたくさんあった。だから私はそれらを吸収していくのが楽しくて仕方なかった。



しかし残念なことに、そのワクワクが続いたのは数年間だけだった。


寝ても覚めても物作りをしていたため【鍛治】はランク2に成長していた。しかしそれでも私は気付いてしまったのだ。このままでは究極の物作りは出来ないと。


自分の実力も、理論の理解も、私の求める理想には遠く届かない。別に理想がきっちり決まっているわけでは無い。それでも私にはその不満がはっきりと感じとれていた。


何かきっかけが必要だ。この状況をガラリと変える何かが。


私はそれを考え続けていた。



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