ギルドマスター
卒業式の日はこうして過ぎ去ったわけだが、僕は学園長室に呼ばれていた。
一体なんの話だろうか。ぼく、何かしちゃっただろうか?
そう身構えていた僕だが、優しそうな雰囲気の学園長が出てきてホッとした。
「君がピヨン君かい。ほう、、、。うむ、確かに素晴らしいものを持っているようだ。さあ、座りたまえ。楽にしてくれて構わんよ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
そして少しの沈黙のあと、学園長は喋り出した。
「学園を首席で卒業し、かつ様々な偉業を成した生徒には、とあるアイテムを渡すことになっているのだ。これを渡すことになるのは何十年ぶりだろうね。」
そう言って学園長が取り出したのは、青い透き通った球だった。
「受け取りたまえ。」
僕はその球に触れた。その瞬間、その球は光ら始め、やがて僕の体の中に溶け込むように消えてしまった。
「え、え、あれ?」
「ほう。やはりか。ピヨン君、君は認められたんだ。相応しい実力を備えていたと言うことだ。」
さっきから話についていけなかった。
相応しい実力?なんのだろうか?
「【ギルドマスター】だよ。様々な偉業を成し遂げ、人を導くカリスマ性を持ち、人から愛されるキャラクターで、実力も確かな人物。そういう人にしかなることのできないものだ。君も知っているだろう?Sランク冒険者なのだから。」
ああ、僕は知っている。
超巨大な有名ギルドのトップは、大抵【ギルドマスター】を習得している。
それがどのような力なのか、僕には想像もできていなかった。
しかし、それを習得した今、僕には使い方が分かる。
「これは、、、すごいです!これは僕が欲しかったものです!学園長、ありがとうございます!!」
僕は嬉しくなってお礼を言っていた。これがあれば僕は、、。
「うむ。喜んでもらえてよかったよ。これからも君の躍進が止まることはないとわたしは確信している。しかしながらこれが、その一助になれたのであれば、学園長冥利に尽きるというものだよ。」
「学園長、、。ありがとうございます!僕、これからも頑張ります!たまには学園に顔を出しに来てもいいですか?」
「はっはっはっ。もちろんだとも。君が来てくれれば学生たちも大喜びだ。いつでも歓迎するよ。」
ぼくは学園長と硬い握手を交わし、学園長室を後にした。
そして彼女たちと合流した。
「「「「「【ギルドマスター】になった!?!?」」」」」
「え、そんなに驚くことなの?」
「「「「「、、、。」」」」」
やはり【ギルドマスター】はすごいものらしい。
「あ、とりあえずみんなのことを登録しておいたよ。それに、地下帝国の仲間たちのことも。」
「うん、、。ありがとう。もうピヨン君には驚かされてばっかりだよ、、。」
「ほんとだよね、ダーリンってば、、。」
「あーー!ダーリンって言ったー!わたしも言いたい、ダーリンダーリン!」
そんなふうに盛り上がっていたのだが、僕はハッと気がついた。
シャルルさん、、?
シャルルさんが戦っている。それもかなりの強敵と。
【ギルドマスター】の僕にはそれが分かった。
僕は急いで、家に戻った。ここには、サイエンさんとクリートさんが作成した、黒い箱がある。
教わった通りにそれを操作すると。
黒い箱に、映像が映し出された。
地下帝国の様子が。シャルルさんが巨大な黒い魔物と戦っている様子が。
「ピヨン君、急に走り出してどうしたの、って、シャルルさん!?え、地下帝国で一体なにがおきてるの!?」
「僕にもわからない。でもこれは、、。」
「ええ、見たこともない化け物だわ。こんなの、、、世界が滅んでもおかしくない。」
マリアが縁起でもないことを言った。しかし残念ながら僕も同意見だ。こんな化け物と1対1でやり合っているシャルルさんが凄すぎて言葉が出ない。
僕は必死で、【ギルドマスター】でできることの中から今役立ちそうなものを思い浮かべた。
それから数分後、化け物はさらに巨大化し、凶暴な見た目になった。同時に、シャルルさんを覆っていた強いエネルギーの光が失われていく。
まずい!!
僕は咄嗟に発動していた。
「シールドバッシュ!」
間一髪間に合ったようだ。
僕は通信機でみんなに連絡を入れる。
「よかった〜。間に合ったみたいですね、シャルルさん、無事ですか?」
「僕、色々あってちょっとギルドマスターになりました!それであの、勝手ながら皆さんをメンバーに登録させてもらったんです。ギルドマスターの僕は、離れたところからでも皆さんのサポートができるんです、さっきのやつみたいに!やっと僕もお役に立てますね!」
それから僕は全力でシャルルのサポートをした。【ギルドマスター】の力を使うたびに、疲れが溜まっていく。だんだん呼吸が苦しくなってきた。でも大丈夫。まだやれる。シャルルさんの疲れはこんなものでは無いはずだ。
「シャルルさん、、。ピヨン君、、。がんばって、、。」
彼女たちも祈るような思いで応援してくれている。大丈夫、負けるわけがない。あのシャルルさんだもの。それに、彼女たちも応援してくれている。僕だって、今できることを全力でやるんだ。
僕たちは、負けない。
そして、、。
化け物は崩れ落ちた。
地下帝国の勝利の瞬間が訪れた。
僕はそれと同時に意識を手放した。ああ、よかった、、。
僕も、役に、たてたよね。
僕は不安だった。みんなの役に立てているのか。
でも、あのシャルルさんの手助けができたんだ。こんなに嬉しいことは無い。
彼女たちがそっと僕を抱き止めてくれた。ありがとうみんな。
僕は幸せ者だ。




