なつやすみ
あの日から、彼女たちはこれまで以上にグイグイと僕に迫ってくるようになった。僕、なんかしちゃったのだろうか?
「ねー、ピヨンくーん。こっち見てー。もー恥ずかしがらないでよ。」
「ピヨン君、わたしと一緒に泳ごう、あ、でもわたし泳げないんだった、ピヨン君、手取り足取り教えて〜。」
「ピヨン君、はい、あーん。暑い時はやっぱりアイスクリームだよね。」
今、僕たちは夏休みを満喫している。
それは他の人も同じようで、ビーチには人がたくさんいた。
そんなことよりだれか助けて欲しい。ただでさえ綺麗な彼女たちが、水着を着て密着して来る。
僕も男なのだ。そんなことをされたら、困ったり困らなかったりするのだ。
そんな時、よく聞き覚えのある声がした。
「ピヨン君、久しぶり。」
「あ、わ、わあ、久しぶり。これはその、なんでもないというか。あはは。」
ちょっとこの状況を見られたのは恥ずかしかった。
水着の女の子たちに囲まれ、膝枕され、うちわで仰がれ、アイスクリームをあーんされていたところだったのだ。
「「「「「お久しぶりです!!」」」」」
しかし彼女たちの切り替えは目を見張るものがあった。シャキッと挨拶をする彼女たちが。さっきまでとは別人のようだ。
「なんやすごいもんを見た気いする、おもろいわあ。ここまでいくと才能やな。兄さんの仲間選び、センスよすぎやろ。」
「でしょ。ピヨン君ていうんだよ。生粋のハーレム体質なんだ、あとでおもしろエピソードたくさん話してあげるよ。」
「ほんま?楽しみやわあ。」
ハーレム?聞いたことの無い単語だ。
そんなことよりこの【猫人】族の女の人は誰だろう。多分【気術】ランク2を習得している。
でもなんか、勝てる気がしない。僕は【勇者】ランク2と【気術】ランク3を持っているというのに。
そう思っていると今度は【龍人】族の大男が目の前にやってきた。
「ガッハッハ!これぞ青春である!ふむ、たしかにこういうのも一興かもしれん。よし、俺も今度大量の美女に囲まれるというのをやってみよう。ピヨンと言ったか!俺の名はバートルだ。今度ぜひともその手法、お教え願いたい!」
バートルさんと言うらしい。バートルさんもとっても強い。それになんだか包容力を感じる。初対面なのになんでも気軽に話せてしまいそうだ。
とはいえ手法とは何のことだろう。ぼくは特になにも意識せず、普通に生きてきたのだ。
「え、あ、はい、その、僕はピヨンていいます。手法と言われましても、気付いたらこうなってしまってですね。」
僕が若干答えに詰まりながら返答すると、それを聞いた彼女たちが悲しそうな顔をして言った。
「ピヨン君、嫌なの、、?」
「ピヨン君、わたしたち、じゃま、、?」
取り巻きの女の子たちは、“わざと”悲壮感たっぷりに言う。
僕は慌てて言った。
「そんなことない!ぼくはみんなのおかげでここまで強くなれたんだ、ダンジョン攻略だってそうだよ。僕にはみんなが必要だし、そういうの抜きでも、単純にみんなのことが好きだし、大切なんだ!」
「「「「「、、、。」」」」」
するとみんな黙ってしまった。それどころか赤くなっているように見える。きっと怒っているのだ。僕があんな言い方をしてしまったから。後でもう一度謝っておこう。
「あれを天然でやってるんやから敵わんわなあ。差し詰め物語の主人公ってとこやな。」
後で聞くに、【猫人】族の女の子はシャルルさんというらしい。
言っている内容はよく理解できなかった。
「ふむ、純粋にまっすぐ想いを伝えるのが大切、とな!メモしたのである!ピヨン、早速教えてくれたのだな!感謝する!ガッハッハ!」
バートルさんは相変わらず何かを勘違いしている気がする。
そして僕たちは水着のまま船の上にやってきた。なんとこの船、シャルルさんが貸し切りにして乗ってきてくれたらしい。
僕たち全員を乗せるためだと言う。なんといい人なのだらうか。僕の仲間やパーティメンバーは本当に素晴らしい人ばかりだ。
ぼくはその輪にいられることがとても嬉しかった。
「すごい綺麗!わたし船乗るの初めて!」
「え、マリアちゃん初めてなんだ!でも私も子供の頃一回のっただけで、、」
みんなも豪華なこの船を楽しんでいるようだ。特にマリアは、幼少期に厳しい家庭で育ったため、みんなで遊んだり船に乗ったりするのが楽しくて仕方がないようだ。
素晴らしい夏休みはまだまだ続く、そう思って疑わなかった。
しかし現在はむしろ地獄に近いかもしれない。倒れそうになりながらも僕は必死でみんなに呼びかける。
「みんな、僕のそばから離れないで。もしも倒れちゃっても大丈夫!僕がなんとかしてみせるから。だからもう少し、一緒に頑張ろう!」
「「「「「ピヨン君、、。」」」」」
大丈夫、今までと比にならないくらい辛いけど、僕たちならきっと乗り越えられる。そして乗り越えた先にはさらに強い力を手にすることができるはずだ!
そしたらこのパーティはもっといろんなところにいって、いろんな敵と戦って、いろんな冒険が出来る。
そのためなら僕はいくらでも頑張れる。
そんな中、シャルルさんだけは能天気な口調で言った。
「ええなあ、魔境の魔物は効率が段違いやわ。こんなにたくさん魔物を用意してくれた兄さんらに感謝やね。」
僕は驚きで声も出なかった。
やっぱり僕の勘は正しかった。シャルルさんにはそこしれない何かがある。
ただでさえ辛かった莫大な【気】を取り込む修行が、さらなる華僑を迎えた。
体が焼けるように熱い。
いつ倒れてもおかしくなかった。でも僕は倒れるわけにはいかなかった。みんなを守るんだ。
そしてどれだけの時間が経っただろうか。ついにこの修行は終わりを迎えた。僕は【気術】ランク4へ、彼女たちも無事【気術】ランク3になっていた。
本当に嬉しい。まずはみんなで喜びを分かち合った。最後まで僕たちは頑張り抜いたのだ。
そして2人にお礼を言いに行った。
このたくさんの魔物たちを集めて来るのにどれだけ大変な思いをしたのだろうか。
いくら感謝しても、足りないように思えた。
ぜひそのまま色んな経験を積んで学園生活を楽しんでくれと言ってくれた。そして、出来れば首席卒業を目指して欲しいとのことだった。
僕にそんなことができるのだろうか。
でも、その考えはすぐに払拭された。卑屈な僕も少しずつ卒業しよう。
みんなの協力と自分たちの努力によって僕たちはここまで強くなることが出来たのだ。
そしてこれからも勉強や訓練、それに冒険者としての活動や、ダンジョン攻略。やりたい事は山ほどある。
それを一生懸命、楽しみながらこなしていけば、首席卒業だって夢では無いかもしれない。
ぼくは1人じゃ無い。僕には最高のパーティメンバーと、仲間たちがいるのだから。




