ボス戦
巨大な扉を開けて第30層に入ると、早速ボス戦が始まった。
ボスの見た目は天使と悪魔を合体させたような感じだ。黒い翼、白く光るリング、黒い衣、白い剣。
明らかに、今まで戦ってきた魔物とは比べ物にならなかった。
それでも僕たちは決して臆さなかった。
いつも通りの連携でボスに立ち向かう。
「ピヨン君!回復するね!」
「ありがとう!」
「やー!えい!」
「全体攻撃来ます!構えて!」
「防御結界使うね!」
なんとかこのままいけば倒せるかもしれない。そんなことを思ったその瞬間だった。突然ボスの形態が変化した。
一回りほど大きくなり、白かった剣が、いつのまにか黒くて大きな鎌へと変わっていた。そして強力な全体攻撃が来た。
「きゃ!ごめんなさい油断したわ!」
「なにこの動き、うぐ!」
僕は【勇者】スキルの効果で予感がはたらき、なんとか直撃を躱わすことができた。しかし、みんなには攻撃が直撃したように見えた。
「く、みんな!!」
ぼくは瞬時に振り返り、みんなの無事を確認する。どうやら大きな怪我を負った人はいないようだ。それは不幸中の幸いだった。
「マリア!防御結界を張って、みんなを回復してあげてくれ!」
「うん!防御と回復ね!でも、ピヨン君のサポートが、、」
「僕は大丈夫。みんなを、任せたよ。」
絶対にみんなを死なせたりしない。
今ここで、この敵を倒す。
僕にはもう、目の前の敵しか見えていなかった。それまで躱し切れなかった攻撃も、今では見える。そして紙一重で回避する。一瞬の隙をついて攻撃を当てる。
途中何度も疲れて倒れるかと思ったが、その度になんだか再び力が戻ってきて、長時間戦い続けることができた。
まだだ、まだ足りない。もっと集中するんだ。
それでも攻撃は喰らうし足もフラフラしてきた。
あと少し、あと少し頑張ろう。
僕は負けられない。
絶対にみんなを守り抜いて見せる。
そして待ち望んだ【気術】ランク3の時が来た。僕は自分でも驚くほど、自分の体に力が宿るのを感じた。
「「「「「ピヨン君!」」」」」
みんなが僕を呼ぶ声がした。
彼女たちの方を見る。みんなの顔を見ると安心する。それに元気も湧いてくる。ぼくはそっと微笑んだ。
そして、全身全霊を込めた一撃をボスに喰らわせてやった。最後はお父さんにもらった剣ではなく、拳で直接トドメをさした。その方がより大きなダメージを与えることが出来る気がしたからだ。
そしてその拳には、バッジが握られていた。
これは攻略者の証という。さすがに今回は僕だけしかもらえなかったかなと少し申し訳ない気持ちになっていたのだが、あの2人も当然のように攻略の証を持っていたので驚いた。
やはりこの2人はすごい。いつのまに大きなダメージを与えていたのだろうか?
でも今はそんなことより、すべきことがあった。
僕は攻略の証を掲げた。
みんなから盛大な拍手が届いた。
やったね!みんな!攻略完了だ!みんな本当にありがとう!
そんなことを言おうと思ったのだが、全く声が出ない。あれ、体も動かない。力が、入らない。すごく、眠い。
「「「「「ピヨン君!!」」」」」
みんながあわてて駆け寄ってくる姿がぼんやりと見えた気がした。そして僕は眠りについた。
どのくらい寝ていたのだろうか。
僕は大きなベッドの上で目を覚ました。
「「「「「ピヨン君!!」」」」」
見渡せばみんながいた。それも、とても近くに。
「あれ、みんな、、ぼく、寝ちゃってた、の?って、え、え、ぼくこんな薄着で、っていうかみんなもすごい薄着だしとっても距離が近いような、どうなってるのこれ」
「もう、そんなこと気にしなくていいじゃない、ピヨン君、かっこよかったよ。」
「また、守ってもらっちゃった。ありがとピヨン君」
「あー、そこくっつきすぎ!ねーピヨン君ここ、柔らかいよ。こっちにおいでよ」
いい匂いがする。ふわふわする。僕はなんとかみんなにやめてと伝えるが、全く聞く耳を持ってくれない。
そんなことされると、え、マリアまでそんな、あ、わあ、だめーー!




