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おてがみ

イブおねえちゃんへ。


わたしのなまえはミルクといいます。


イブおねえちゃんにおれいをいいたくて、このおてがみをかきました。


わたしのパパは、せかいのあちこちにレストランを開いていて、毎日いろんなおきゃくさんがきていました。


でもあるひ、わるいひとが同時にたくさんやってきて、パパのお店をぜんぶ壊してしまいました。


そしてわたしも、わるいひとたちにさらわれて、痛いことやひどいことを言われました。


でもパパがわるいひとにたくさんお金をわたして、わたしをたすけてくれました。


でも、お店も全部つぶれてしまって、お金もなくなって、コックさんもみんないなくなってしまいました。パパもママも、元気がなくなって毎日泣いていました。わたしはそれが悲しくて、ずっとめのまえがまっくらでした。なにも食べたくないし、何もしたくありませんでした。



そんなとき、シャルルお姉ちゃんと出会いました。


パパとママとわたしに、お料理を食べさせてくれました。


元気のなかったパパやママがひさしぶりに笑顔になりました。わたしも、おいしすぎて、いままでたべれなかった分もいっぱいたべました。


シャルルお姉ちゃんは、それから毎日のようにお料理を持ってきてくれました。


わたしは、ずっと泣くことも笑うこともできなかったのですが、毎日お料理をたべていたら、生きる気持ちがでてきました。


いまではとても元気です。



それだけではありません。


シャルルお姉ちゃんは、パパとママと一緒におしごとをしたいと言いました。



それからはとてもすごかったです。


みたこともないやりかたで、パパとママのおみせをあっというまにたてなおしました。


たくさんの若い店員さんがやってきて、みんなでお店をきれいにしました。


そして、わたしたちが毎日たべさせてもらったあのお料理を、おみせごとに、いちにち10皿だけ、たかいおかねで売りました。



そしたら毎日のようにかぞえきれないほどのお客さんがやってきて、パパとママのお店はあっという間に世界で1番のお店になりました。



シャルルお姉ちゃんにおれいを言うと、あのお料理はぜんぶ、イブお姉ちゃんがつくったものだといいました。



今ではパパもママも楽しそうにおしごとをして、わたしもたまにお店のおてつだいをしています。わたしはとても幸せです。


イブお姉ちゃんのお料理のおかげです。



パパとママとわたしを、たすけてくれて、幸せにしてくれて、ありがとう。


ミルクより。






この手紙を読んだ時、私は不思議な気持ちになっていた。

 生まれた時から要らない子だった私は、現在では素敵な仲間に大切にされ、それどころかミルクちゃんの人生を救うことが出来たのだ。


私が誰かの役に立ち、そして救うことができるなんて、昔の私なら想像もできなかったことだった。

現実から逃げるようにひたすら農業と料理に打ち込んできた。大事な人もエンジュちゃんだけだった。


そんな狭い世界で生きていた私にとって、今こうして誰かを幸せに出来ていることが夢のようだった。


私をこんなふうに変えてくれた仲間たちにいくら感謝しても足りない。いつか、私にできる最高のご馳走をみんなに振る舞おうと、心に誓った。





そしてこの手紙を読んで納得もしていた。


エンジュちゃんがやったこと、シャルルさんから頼まれたこと。


全部が糸で繋がったような気がした。


わたしはここ最近の忙しい日々を思い返す。

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