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優勝

「え、バートルさん!?」


「ガッハッハッハ!ピヨンではないか!決勝で会うとは、なんたる偶然!ピヨン、感謝する!俺はうれしいぞ!ガッハッハ!」



笑いが止まらなかった。今ちゃんと、俺はワクワクしている。これから戦闘が始まるのだと。


相対しているだけでわかる。ピヨンは強敵だ。いい戦いになるだろう。


最初こそ、ピヨンはあたふたと落ち着きの無い感じだったが、すぐにそれは収まることになる。


「バートルさん、、。ええ、そうですね!いい勝負にしましょう!負けませんよ!」


柔らかい雰囲気のピヨンはもうそこにはいなかった。


纏う気迫がまるで違う。そうか、これが戦う時のピヨンか。面白い。


楽しみで待ちきれない。ピヨン、さあ早く始めよう。審判、試合開始の合図を!さあ!はやく!


「「「「「ピヨンくん!がんばってーー!!」」」」」


そういえばピヨンには、取り巻きの作り方のアドバイスも聞きたい。


この試合の後、たっぷり聞かせてもらうとしよう。



そして試合開始の合図がなる。


俺とピヨンはまずは小手調べとばかりに、1直線に攻撃をぶつけ合った。


その余波だけで会場が揺れた。


お互いに威力を相殺し、再び距離を取る。そして今度は素早く回り込み攻撃をしかける。ピヨンはそれを察知して前方に交わしつつ、そのまま反転して足で蹴り付けてきた。もちろんその足には大量の【気】を纏っている。


これは防御せざるを得ない。俺は硬い【気】を腕に纏わせ、ピヨンの蹴りを受けた。



しかしそれでも威力を防ぎ切れず、数メートルほど吹き飛ばされてしまった。なんだこの異様なまでの力の強さは。


俺は笑いが止まらなかった。

「ガッハッハッハ!ちゃんと痛かったぜ!そうかなるほど!複合技か!素晴らしいぞピヨン!」


ピヨンは【勇者】のスキルと【気術】のスキルを器用に組み合わせていた。さっきの馬鹿力も、その複合によって生み出されたものだと推測できる。


会場が大いに湧き、実況者も声が掠れるほど叫んでいる。



まだだ、ピヨン。戦いは始まったばかりだろう?


そうして何分が経過しただろうか。互角の戦いは続いた。観客たちもいつしか静まりかえり、俺たちの戦いを食い入るように見つめているようだ。


永遠に続くのではないかと錯覚するような、激しくて休む暇もない戦いであったが、終わりの時はやってきた。【龍人】の種族としての力が最後は有利に働いたのだろうか、ピヨンは完全に消耗しきって、肩で息をしている。


「「「「「ピヨン君、、、。」」」」」


しかしその時だった。取り巻きの応援が、その強い想いがピヨンに伝わったからとでもいうのだろうか。


ピヨンの体が、これまでよりもずっと、眩しく輝き始めた。もうそんな力など残っていないはずだ。立っているだけでもやっとのはずだ。それなのに何故、おれは“気圧されている”のだろうか。


俺は身構えた。

底知れない何かが、強い攻撃が、ピヨンから繰り出される。そんな予感をひしひしと感じとり、俺は冷や汗をかいていた。防御の【気】を大量にかき集めながら、それでも俺は笑っていた。


「ガッハッハッハ!ピヨンよ、来るがいい!俺は逃げも隠れもせん!さあ、その一撃を撃ってみろ!遠慮いらんぞ!」




しかしその時、審判の笛がなる。

「勝者、バートル!判定勝ち!」



ピヨンはもうとっくに限界だったのだろう。いつのまにかあの光は消えており、うつ伏せに倒れていた。


あれは何だったのだろうか。あの攻撃を当てられていたら、勝敗は分からなかった、、、。むしろ俺の部が悪くなった可能性さえあった。

 


しかし今はそれよりも、ピヨンに敬意と感謝を送ろう。最高の時間であった!


また再戦を申し込もう。そして絶対にまた本気で戦おう。俺は勝手にそう決めたのだった。

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