闘技場
俺は戻ってきた。
【ドラールスタジアム】へと。
世界最大の大会、【ドラールトーナメント】が今年も開催された。
まだ完全にはランク4の力を身体に馴染ませることができてはいないが、その鍛錬も兼ねて対人戦をやってみるのもいいだろう。
いずれにせよ、戦闘狂としては、今の自分の力を試したくて仕方がないのだ。
というわけで気合を入れて参加したのだが。
この大会のために死ぬ気で鍛え上げて来る猛者の集まり。そんな参加者が万をこえる巨大トーナメント。しかしなぜだろう。あまりワクワクしないのは。
そしてその理由はすぐにわかることになる。
あまりにも戦う相手との実力差が離れているからだ。
1回戦も2回戦も3回戦も、戦っているという感覚がまるでしなかった。
場合によっては俺の姿をみただけで降参を宣言されることもあった。
ランク4とは、これほどのものなのかと、痛いほど思い知った。あの仲間たちの顔を思い浮かべる。誰もが強者で、妥協を知らず、狂気とも呼べる向上心があった。
仲間たちと一緒に過ごした時間によって、俺の感覚が麻痺していたのかもしれない。
そんなことを思っていると、準決勝で見知った顔のやつと当たった。
「よお、性懲りも無くまたトーナメントに参加しちゃってほんと変わらないよね。早くお前の絶望に歪んだ顔が見たいんだよ、早く見せろよ、見せてみろよ。しかも何?さっきからその表情。強者にでもなったつもりかよ。
「いいか、お前は、その腕輪がある限りどれだけ魔物を倒しても1レベルたりとも上がらない。もうお前は終わってるんだよ。あ、いいこと考えた。戦うのも面倒だし、もう命令しちゃえばいいんだ。バートル、降参しろ。」
「あはははは、どーだい、戦うことさえさせてもらえず無惨に敗退していく気持ちは?ねーねー、教えてよ、、、。ん?おい、なんで早く降参しないんだよ。早く降参しろっつってんだよ。おい、なんでだよ、おい!」
全部は聞いていなかったが、最後らへんは確かに気になった。特に命令によって体が勝手に動いてしまったりすることもない。
何か忘れているだろうか?
そう言えば、ひとつ、大昔の資料で見たことがあった。もし奴隷になったとしても、その契約主よりも奴隷の力の方が強かった場合、主従関係は解除されると。
つまりは、、、レベル差があったとしても、俺の方が強いということだ。
まあ、そのことがなくても分かってはいたのだ。全くワクワクしなかったから。
今から戦闘が始まるという、あの緊迫感が無かったから。レベル差はあれからさらに開いているはずなのに、それでも取るに足らないと思えてしまう、それが残念だった。
俺はいい戦闘がしたいだけなのに。
まあいい、それならさっさと終わらせるとしよう。
いまだに色々と喋っているかつての仲間を一撃で気絶させ、準決勝は幕を閉じた。
せめて決勝は、面白い相手と当たりたいぜ。
そんな俺の願いは、無事叶うこととなった。




