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転機

【ドラールトーナメント】を勝ち進み、準々決勝まで駒を進めた。


相手はなんと、一緒に魔物狩りをして訓練をしたかつての仲間だった。そしてそれは、俺に【奴隷の腕輪】を嵌めた本人でもあった。



「なあ、今どんな気分だよ、バートル。俺がなんでお前に、命令しないかわかるか?修行を禁止しなかったかわかるか?その理由はひとつだけだよ。あれからも毎日毎日飽きもせず努力してるのを俺は知ってるぜ。その努力を目の前でねじ伏せるためだよ。修行大好きなお前が、戦闘狂の、村の希望のお前が、どれだけ努力しても無駄、無意味!ずっと成長できない。その絶望した顔を見るためだ!」



「お前がトーナメントに申し込んだと聞いた時本当に嬉しかった。まあそんなレベルでここまで勝ち上がってくるとは思っていなかったが。まあいいさ、早く戦おうぜ。



「なあなあ、なんでそんなに弱いんだ?村の希望、バートルさんよお!そんなに頑張って向かってきても、勝てるわけないんだよ、お前が俺によ。なんか言ったらどうなんだ?怖くて何も言えないのか?まー、それはそりゃそうだよな、そんな腕輪つけてたら。どうやってここまで勝ち上がったか知らねーけど、なんかインチキしたんだろ?恥を知れよ。」



ちょっと早口すぎてよく聞き取れなかったが、多分内容は俺の悪口なのだろう。しかしこの男、強くなった。この2年間でかなりの魔物を倒し、レベルを上げたのだろう。



まるで勝てる気がしなかった。しかし何かは掴めそうな気がする。あと少しで。この体を纏うような、、いや、体の中を蠢くような、、エネルギーの塊?だろうか。わからない、しかしこの感覚を掴みかけたその時、俺の戦闘狂としての血が騒いだ気がしたのだ。これをなんとしてでも極めたいと。



その感覚を掴むべく、何度も目の前の男に立ち向かうが、開いたレベル差は如何ともしがたく、結局判定負けになってしまった。



うーむ、あと数時間ほど戦いたかった。

そしたら何か変わったかもしれないのに。



でも仕方ない。また別の方法を探すとするか。そう思い俺は立ち去った。



そのすぐあとのことだった。ただならぬ気配を感じで俺は冷や汗と共に振り返った。


そして俺はそこにいた2人を見て目を見開いた。


思わず大声をあげそうになったが、目にも止まらぬ速さで口を抑えられた。耳元で静かに男が囁く。


「あっちで話しましょう。」



人気のないところにやってきてすぐに、俺は我慢できずに懇願してしまった。

「神に誓って誰にも言わないから、あんたらの力の一端を俺に見せてくれ。」



すると目の前の2人はあっさりと了承してくれた。


「おいおい、、、あんたち、神か?」

俺は驚愕した。これほどまでに震えたことがあっただろうか。世界の有名な強者たちについてそれなりに知っているつもりだが、それらを遥かに超越しているだろうことが簡単に理解できた。


素晴らしい、最高の気分だ。

絶対に俺はこの2人の仲間になって、一緒に強さの頂きを目指すのだ。俺は勝手にそう決めた。


「ガッハッハ、てなわけでな、俺は【奴隷の腕輪】をつけられちまったわけよ。

いや、俺も悪かった。能天気に相手を信じすぎたというか、ちゃんと相手を知ろうとしなかった結果だろうな。だが、この腕輪、そんなに悪くもないだわ。山に篭って修行してたらな、何か体を駆け巡るエネルギーのようなものを感じ取ることが出来てなー!」


気がつくとベラベラと喋ってしまっていた。

黙って全てを聞いてくれた2人は、仲間になってくれないかと言ってきた。


「仲間?おいおい、とっくに仲間のつもりだったぞ。よっしゃとりあえず任せとけ、俺に最強になって欲しいんだろ?そうと決まれば善は急げだ。俺は山に行くぜ、またな!」



2人が目の前で見せてくれた力。

あれこそ、俺が極めたいと思っているものの正体だった。


俺はそれが瞼に焼き付いている今のうちに、修行を再開したのだった。

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