拘束具
僕がクリートと過ごした日々は、幸せそのものだった。
彼女は聡明で、僕の発明を全て理解してくれた。それどころか彼女は僕の思い付かないようなアイデアを次から次へと出し、発明をより高度な次元に押し上げてくれた。
共に作る機械は芸術的なまでの完成度を誇り、地下帝国は日の出の勢いで進化して行った。
彼女となら何でもできる、どんな物でも作れる。僕とクリートは2人でひとつなのだ。
そんなある日、ルシーがやってきた。
地上に案内され、それを見て驚いた。超災害級に指定されている伝説の魔物が瀕死の状態で転がっていたからだ。
これを完全に抑え込む拘束具を作って欲しいとのことだ。
うーむ。
かなり骨が折れる作業になるだろう、だが心配無い。僕にはクリートがいるのだから。
まずは僕とクリートで話し合う。丈夫な構造、いろんな形の魔物に広く使えるような汎用性。大量に必要とのことなので、量産体制のことまで視野に入れる必要がある。
そして1週間後、試作品が出来上がった。
しかしそれではダメだった。超災害級は伊達じゃ無い。
もっと頑丈にしなければ。
試行錯誤の末、ついに、満足のいく拘束具が出来上がった。
それからはひたすら拘束具を作り続けた。僕もクリートも流石に疲れたのだが、どれだけ疲れていても完璧な仕事をこなし続けるクリートをみて、さらに好きになってしまった。
そしてやっと全ての拘束具を魔物たちにつけ終わり、一安心しながら地下に戻ったのだった。
それからは地下帝国をどんどん発展させていく日々が続いた。
それぞれの層ごとに、必要な工夫を施していた。例えば第5層では、地上からの光をエネルギーとして地下帝国に取り込み、そのエネルギーを再び元の光に戻して照らす仕組みを作り上げた。さらに天井には装置を取り付けた。【気】を充填することで水を作り出す装置だ。
それらを中央の操作盤で操作すると、一斉に雨のように水が降り注ぐ仕組みだ。
第5層はは農業施設。
地下帝国の住民全ての食糧が賄える規模になっている。
そんな地下帝国に、新たな仲間がやってきた。
【悪魔】と【天使】の2人組だった。まさかの【天界】出身だった。
せっかくなので地下帝国を案内していると、第5層の農業施設で【悪魔】のイブが異常な食いつきを見せた。
イブは、いかにここの土が素晴らしいのかを妹のエンジュに語っていたためつい嬉しくなって捲し立てた。
「ああ、その通りさ。ここは農業するための階層だよ。イブさんはこの土の凄さを理解してくれたようだね、話がわかるじゃないか。これは僕が編み出した理論でね、もともとこの魔境の土はエネルギーを多分に含み素晴らしかったのだがそれをさらに改良する方法を閃いたのさ、そして僕の考えたその絶妙な土の成分の配合を成し遂げたのが僕のお嫁さん、クリートってわけ。それを実行している時のクリートは一段と輝いていてね、目が自然と惹き寄せら」
喋りすぎた僕はいつものようにクリートに注意されるが、そんなクリートも愛おしい。
そしてイブとエンジュはこの第5層に住むことになった。
新生活を送る2人に混じって、一緒にご飯を食べることが多かったが、僕とクリートは一瞬にしてその料理の虜になった。
こんなに美味しいものは食べたことが無かったからだ。
【気術】ランク3を習得してからというもの、睡眠や食事があまり必要なり、まあいっかという感じでクリートと一緒に物作りに勤しんでいたわけだが。
気持ちの問題かも知れないが、美味しい料理を食べた後の方がなんだか頭が回るし作業効率も良くなる気がした。
イブの料理は本当に素晴らしい。運び込む具材ももっといろんな種類のものを持ってくることにしよう。
そして、料理という分野の研究も面白いかもしれない。いつか時間ができたらやってみることにしよう。
僕はそんなことを思ったのだった。




