転機
そんな僕に転機が訪れたのは、とある2人組と出会った時だった。
研究室に来客がきたと知って、また面倒なことか、他の研究者の嫌がらせかと思った。
しかし見てみればここらでは見かけない顔をしていた。
まだ15歳にもなっていないように見える。
しかしどうしてだろう。
僕は何となく分かってしまった。
特にこの男の方。
こいつは話せると。
全てを理解しているかのような目をしたその男に俄然興味が湧いたのだ。この男となら研究について語り合える。
初対面にも関わらず、なぜだかそんな気がしていた。
そしてそれは現実のものとなった。
「この部分がキモだと思ったわけさ、案の定3パターンの実験を比較してみると顕著にその性質が現れていてね、、。」
気付けば何でも話していた。周りの誰もついてこれないような細かい研究の話まで。
しかし男はそれ以上のことを返してくる。
音の仕組み、波長について。音を保存し、好きな時に再現する機械がつくれたら面白いのではないか。
この男と話していると頭が回って回って仕方ない。
それは今まで感じたことの無いほど、心地よい感覚だった。
そして驚きはそれだけに収まらなかった。
まず、男は僕のことを仲間に誘ってくれた。僕は即答で了承する。僕からお願いしようと思っていたくらいだ。
だが驚いたのはいきなり何やら訓練が始まったことだ。よく分からないが体が熱い。というかやばい、何だこの感覚は、息が苦しい、たすけて、頭が割れるようだ。しかし2人からは一切の害意を感じない。
訓練というのは本当のようだ。これほどきつい訓練が他にあるだろうか、と思いながらも僕はひたすら耐えた。
無限とも思えた地獄の時間が終わると、僕は【気術】を習得していた。
スキルとは、選ばれたエリートだけが発現できる特別なものだったはずだが、、。
しかしそんなことはすぐにどうでも良くなった。
「なんだこれは、頭が、クリアになる。冴え渡って仕方がない。今なら最高の発明ができそうだ。ちょっとすまないが僕は研究室に引き篭もることにする。」
そう、【気術】を習得できた瞬間から、頭が冴えて仕方なかったのだ。あと少しのきっかけがあれば前に進めそうな、そんな研究の続きを、一刻も早く進めたいと思った。
だが2人に引き留められ、若干呆れたような顔をした2人に、【気術】をより伸ばすための訓練法を手短に教わったのだった。
心配するな2人とも。こんな面白い物、言われなくたって研究するし、いくらでも訓練して実力を伸ばして見せよう。それこそが、研究者としても成長できる近道であると分かるからだ。
本当にありがとう、仲間にしてくれて。僕に希望を与えてくれて。
いそいそと研究室に戻った僕は、気になる続きの研究に打ち込みながらも、頭の片隅では【気術】について思いを巡らせていた。
これからが楽しみだ。




