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一般の人々

「ねえ、なんかすっごい綺麗な歌声聞こえない?」


「ん?うーん、あ、確かに。どこからだろう?」


「ねーママ〜。あっちいきたいー」

「そうね、行ってみましょうか。」



「女神が僕を呼んでいる気がする。」


「それは気の所為だ、女神はお前のことなど呼ばない。でもとりあえず行くしかないよな、この歌声の主のもとに。」




あたりには謎の人の流れができていた。

家族連れ、恋人、友達、仕事中に抜け出してきた人まで。


その流れはある1点に向かって続いていた。


今にも潰れそうだったはずの商店街が、最近突然息を吹き返し、現在最も勢いのある大規模商店街となった。

その中央広場が今、人で溢れている。否、溢れるでは収まらない。周りの地域を含めたそこら一帯の人口の全てがここに集まっていた。



そこには女神がいた。


男子が見れば一目惚れ、女の子が見ても一目惚れ。可愛らしさと美しさが共存し、完璧なスタイルに、魅力的なダンス、壮大で華麗なメロディ、そこに完璧に調和した透き通るような歌声。



どれをとっても、人々を魅了するには十分だった。



「ゆめ、、、かな??」


「なんて美しいんだ、、それにこの歌声」


「素晴らしい!素晴らしい!この音色はどこから?あの装置か!しかしどうやって?いやそれよりもこんな素晴らしい曲は聞いたことがない」


「なんて美しいの、、。うっとりしちゃった、、。」


「きゃ、いまこっちみてくれたような気がするわ!」


「おれ、生きてて良かった」


「ママ、あれなーに、めがみさまー?」


「ええ、ええ、そうよ、間違い無いわ。昨日の絵本に出てきた女神様よ。」


「な、言ったろ、女神様が呼んでるって。」


「お前のことは絶対に呼んでいないが、なんか俺のことは呼んでいる気がしてきた。」



人々が熱狂するなか、曲は静かに終わりを迎えた。


その瞬間、割れんばかりの拍手が辺り一面に鳴り響いた。


たっぷり3分間は拍手が続き、やっとこの騒ぎが落ち着きを見せ始めたかと思ったその時、


「はいはい並んでや〜。いくつか当たりも入っとるで〜。当たりを引いた人は、、、この子、エンジュちゃんに握手をしてもらえまーす!」




「「「「「「「「「「うおーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」




今度は違った意味での歓声が響き渡った。


よく見れば中央広場の周りには数えきれないほどの屋台が並び、そこには扇子、うちわ、コップ、サインまで幅広く商品が揃っていた。

もちろんその全てには、女神ことエンジュの絵が彫られている。


そしてしっかりと、フリーリング商会と刻んである。



「フリーリング商会をよろしゅうな〜」



いままで名もなき商人たちの集まりだったそこは、今日この日を持って正式にフリーリング商会として広く知れ渡ることになった。



その後は、エンジュのイベントに全く関係のないような商店街の品物も飛ぶように売れた。この日のために商店街を掃除し、改装し、商品の質を上げ、値段も再調整したことの効果が早くも現れた。



女神エンジュを抱え込んでいるだけでなく、その商会の商品の質、値段ともに申し分無いとなればさらに評価は鰻登りであった。



さらに、これほどの大人数を、大きなトラブルもなく捌き切ったその手腕も凄まじい。


フリーリング商会の従業員を是非とも雇いたいと多くのオファーが押し寄せたほどである。


唯一おきた事故といえば、当たりの商品を引き当てた少年が、

エンジュに「今日は来てくれてありがとう。」と笑顔で握手をしてもらった瞬間、喜びのあまり気絶して意識を失ったことくらいである。



こうしてエンジュの存在とフリーリング商会を一気に大々的に広める結果となったエンジュの初仕事は、大成功と言えるだろう。



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