転機
そんな私たちに転機が訪れたのは、とある2人組が【天界】にやってきた時のことだった。
雑談をやめ、案内人としての仕事を果たすべく配置についた。
いつものように、姉がまずは挨拶をする。
そのはずだったのだが。
「ようこそしらっしゃいま、、ま!?し!え、神様でございますか??」
いくらお姉ちゃんとはいえ、あまりによくわからないミスだ。神様?まあいいや、私がフォローしよう。
そう思って挨拶の言葉を口にしながら顔を上げたのだが。
本当に神様がいたのだから驚きだ。
それはまさに、これまで見てきた全てがくだらなく見えるほどに、全てを超越していた。それが同時に2人。
まだ15歳にもなっていないだろう見た目の2人は、まるで全てを悟っているかのような、壮年の時を感じさせる雰囲気を放っていた。
1番異常なのはその強さだ。【天界】を統べる【天王】でさえこの2人に比べたら取るに足らない存在と思えた。
まさに神。
目を凝らせば、何か眩い光のようなものを全身に纏っているような気もする。この光景こそ、神々しいという言葉の語源かもしれない。
もうすでに神様に失礼を働いてしまい、半ばやけになった私は、最後の時間を自分らしくお姉ちゃんと楽しむために、あえて失礼な態度を続けた。
神様を前に、神様を放置して姉妹で会話を続ける。
今すぐ天罰で消されてもおかしく無い。いや、実際に目の前の2人にはそれが出来る。
私はほとんど諦めた気持ちでいた。
しかし私の予想はいい方向に真逆に外れることになる。
「僕たちは神様でもなんでもないよ。それに、消すなんてとんでもない。むしろ2人に興味が湧いてるよ。敬語とかやめてさ、ざっくばらんにお話ししよう。」
私は心底驚いたが、それでもこれまでのノリを貫き通した。
「「やさしい、、。」」
姉と声を被せる。
その後、言う必要も無いようなことまで神様の目の前で話してしまったが、神様達は全く気にしていないようだった。それどころか頷きながら話を聞いてくれた。
「僕たちの仲間になってよ。安全なところに案内するからさ。」
その言葉は文字通り、神からの啓示に聞こえた。これを逃したらもうあとは無い。
私たちに与えられた、最後のチャンスだ。
それでも私は試してしまった。
この神様のことを。
私に夢中になるのか、惚れる可能性があるのかどうかを。
結局私のせいで機嫌を損ね、地上でも追放されたりしたら、私たちは絶対に生きていけない。
捕まえられて奴隷にされて、お姉ちゃんとも離れ離れになって一生を終えるだろう。
だから、試してしまった。
そしてその結果に、私は漠然とすることになる。
ルシーというらしいその女の子の神様は、まるで動じていなかった。私が女の武器をこっそりと見せつけ、他にも様々な工夫を施したというのに。
そのルシーの目には、圧倒的な信頼があった。いや、これは信頼ではない。確信だ。自分が絶対的な存在で、誰も間に入ることなどできるはずもないという、彼女の中での確固たる事実だ。
私は思わず呟いた。
「へぇ、これは、ほんものだ。」
私は確信した。この2人についていけば、人生が大きく変わる。それどころか、まるっきり新しいものになるだろうと。
こんなにワクワクした気持ちになるのはいつ以来だろう。
もちろん不安もないわけでは無い。だけど私にはお姉ちゃんがいる。
最悪、死ぬことになったとしても、2人で死ねるなら別いいとさえ思って生きている。
だから大丈夫だ。
堂々とこの2人についていこう。