16 魔物人形師
昔々、とある王さまが『ケルミラ』の擬態能力を見て考えた。
亡き妻そっくりに変化させよう、と。
いろんな薬を使って『ケルミラ』を拘束・服従させ、妻そっくりに化けさせた。
王さま、大喜び。
ただ、見た目はそっくりだが、声や仕草が違うのが気に入らない。
いろんな薬を試して『ケルミラ』の姿を剥製みたいに固定した。
もちろん、その『ケルミラ』は、死んだ。
時が経っても、技術と悪意は残った。
『ケルミラ』を顧客の望む姿で売る商売『魔物人形師』
乱獲されて『ケルミラ』が減ると『魔物人形師』も減っていった。
そして、自称『最後の魔物人形師』が、ルルリエさんを見つけた。
「よその国は知りませんが、このエルサニアでは裁かれるべき重大犯罪行為です」
意思疎通可能な魔物は、罪を犯さない限りは、平穏に暮らす権利を有する。
流石はエルサニア、進歩的だよね。
「現在、あの犯罪者は『深層自白剤』にて取り調べ中です」
「罪状が確定次第、刑が執行されます」
えーと、手足、どうしよう。
「お預かりしますね」
ルシェリさん、にっこり。
お若いのに、肝が据わっていらっしゃる。
「ルルリエさんには、こちらを」
それは?
「司法省発行の身分証明書とバッジです」
「所有者の権利をエルサニアが国として保障するものです」
「バッジの着用義務はありませんが、登録者の安全を保障するものとなります」
「住所はモノカさんのお宅で仮登録してますので、変更時は連絡願いますね」
「それでは、質問や相談などございましたら、いつでも私の方へ」
ルシェリさん、ありがとうございました。
みんな、お疲れさま。
暗くなってきたから、この辺で野営しても、良いかな。
全員、うなずいてくれました。




