11 安らぎ
みんなでのんびりわくわく待っていると、
ルルリエさんが来てくれました。
以下は、ルルリエさんのお話しのまとめ。
はるか昔、『ケルミシュ』村が出来るもっともっと以前から、
この森に住んでいたルルリエさんと『ケルミラ』たち
争いごとは嫌いなので、ひっそりと暮らしておりました。
ところが、人間が開拓してこの辺りに住み着くと情況が一変。
魔物たちの都合はお構い無しでやりたい放題。
そして『ケルミラ』の擬態能力が商売になると分かると、凄い勢いで乱獲を始めた。
金の亡者たちの悪知恵としつこさの前に仲間たちは次々と捕まり、
残った数少ない仲間たちは追われるように森を離れていった。
今この辺りに残っているのは、ルルリエさんただひとり。
「どうしてルルリエさんはここに?」
カミス君の質問に、ルルリエさんが静かに語った。
以前この村にいたとても仲良しだった娘さんとの思い出。
お別れしてからずいぶん経ったけど、
娘さんが好きだったこの村でのんびり暮らしたい。
「何だか危うい感じがしますね」
そうだね、シナギさん。
俺たちがルルリエさんを見つけた方法は特殊かもしれないけど、
ここがずっと安全とは思えないな。
「私にはどうすれば良いのか……」
ルルリエさんさえ良かったら、俺の村で一緒に暮らすのも良いかも。
俺の家には妖精のフィナさんも居るし、安全と安心は保証出来るよ。
訳あって悪党たちからは狙われにくい村、なので。
「どうして私なんかのためにそこまで……」
ルルリエさんのつぶやくような問いに、
シナギさんが静かに答えた。
「人間同士どころか、家族でさえも信頼できぬ世の中なのです」
「それでも、ルルリエさんが俺たちのお世話をしてくれた際の優しい気の配りようと、あの美味しいお弁当」
「あれを信頼出来ない自分にはなりたく無いのです」
「シナギさん……」
見つめ合うシナギさんとルルリエさん。
うん、シナギさんにとって、あの事件での傷を心から癒してくれたのは、ルルリエさん、なんだね。
それにしても、シナギさんの縁を招く能力って、本当に凄いよね。
「本当にご一緒してよろしいのでしょうか」
よろしいのですよ。
見てください、みんなの表情。
ルルリエさんの話しを聞いて涙目のカミス君、
ルルリエさんに興味津々、『モンスター』を隠そうともしない普段通りのアラン君、
何より、シナギさんの心から安らいだ笑顔。
俺は……たぶんいつも通りののんき顔でしょ。




