01 旅
『リヴァイス 42 若先生と悩ましい諸事情』の続きで、
ロイ村長のお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
俺の名はロイ。
リグラルト王国の片隅にある小さな村の村長をしている。
村は、眠たくなるくらいに平和。
家族は、泣きたくなるくらいに仲良し。
つまりは、俺、幸せ真っ只中。
ただ、仲間たちの方は、身辺が何かと騒がしいようだ。
友人のシナギさんが、刺客に襲われたとの一報。
幸い無事だったそうだが、刺客は何とお兄さん、
シナギさん、大丈夫かな。
「私たちにも何か出来ることは無いのでしょうか」
妻のリノアも心配そうだ。
今の俺たちに出来る事って……何だろう。
「先日、子供たちと過ごした様な、心が安らぐ様な旅など、いかがでしょう」
メイドのセシエリアさんからの提案。
ふむ、良いかも。
今回は男性陣のみで、のんびりぶらり旅って感じでどうかな。
「シナギさんとの暴れ旅、何とも気持ちが昂ぶる!」
いや待て、ヴァニシア。
男だけでの気持ちが安らぐ旅って言ったよな。
そもそもヴァニシアなんか連れて行ったら、みんながヤバい。
カミス君とか、絶対に安らげないだろうし、
アラン君なんて、絶対に安らがないだろうし。
「こんな事もあろうかと、準備は万端ですよっ、ご主人さまっ」
えーと、その剣は初めて見るけれど、
また何か発明したのかな、アリシエラ。
「いいえ、新発明では無く、これまでの技術の集大成ですっ」
「ご主人さまが愛用されてきた片手剣そのままの使用感の、最新素材の剣ですよっ」
「ご主人さまの旅の安全を願って心を込めて鍛え上げた、使いやすさと頑丈さが取り柄のいたって普通の片手剣」
「ぜひ、今回の旅のお供にっ」
ありがとう、アリシエラ。
遠慮なく使わせてもらうよ。
うむ、手触りもバランスも、いつもの剣のまんまだね。
これなら気兼ねなく……って、
鞘の方に、何やら違和感が。
「お気付きになられましたかっ」
「剣はいたって普通の片手剣ですが、モノ作りにあたって何の工夫もしないなど、このアリシエラの尻尾が黒いうちは許せないのですよっ」
「鞘にある沢山のスイッチの組み合わせによって発動する様々な特殊効果の数々は、必ずやご主人さまの旅の快適・安全にお役立ちすること間違いなしっ、なのですよ!」
えーと、ありがとう、アリシエラ。
取り扱い説明書を熟読してから、持っていくかどうかを決めるよ。
「美味しいお土産、よろしくね」
任せてください、フィナさん。
どこに行って何をするのか、全然決まってないけどね。
そんな感じで話しが進んだ男衆オンリーぶらり旅、
はてさて、どうなることやら。