3章 54話 エイデベルト城からの救援
「違うんだ。ルテア王女。
こいつらがインゴッドドラゴンの手柄を独り占めしようと
俺様に襲いかかってきたんだ」
「それは本当ですか?」
「違う、ナーニャがインゴッドドラゴンを討伐して……。
そうだろってナーニャ?」
地面に倒れているナーニャから返事が聞こえない。
「おい、玲音。なにホラを吹いているんだ? 殺すぞ」
「勇者様って皆に慕われる英雄のはずです。
その直也様が殺すって言葉を使うのは余りよくないと思いますよ」
「殺すぞっていうのはその言葉のあやで。
俺様と玲音は昔からの友達なんだ、そうだろ、玲音」
「返事しろ、ナーニャ。僕の声が聞こえるならお前のお得意の
『いーーーだ』って嫌みな顔して返事しろって」
「気持ちは分かります。ですがこれ以上その女の子体を揺すっては
なりません。傷が開くだけですよ」
ルテア王女に指摘されて正気に戻ると僕はナーニャの体を抱えている。
そこには凜々しかったナーニャの姿はなく、
ナンバー32さんのように青ざめてぐったりしている。
「おい、なに俺様を無視しているんだ? 殺されたいのか、ああ」
「だから殺すはやめて下さい。尾桐直也様。
誰かこの場に回復魔法を使える者はいませんか?」
「そうだ? 尾桐直也様。
お願いだよ、これからお前の命令は何でも聞くから。
ナーニャ、ナーニャを回復魔法で助けて下さいよ」
「俺様がそんな回復みたいな女のような軟弱魔法
使えるわけないだろう。夢見ていたんじゃねえかバーーカ?」
「尾桐直也っーーーーーお前ってヤツはっ」
「やる気かてめぇーーーー!!」
「2人ともやめ……」
「ルテア王女。インゴッドドラゴンの体に直也様の刀が
刺さっていました」
遅れてきた合流した兵士の言葉が僕と尾桐直也を我に返す。
「ほら、これで俺様が正しいって証明できただろう?
こいつらは俺様の手柄を横取りしようと襲ってきたんだ。
それで俺様はカッとなってついやってしまったってわけだ」
「それは違う。後出しじゃんけんのおいしいところだけ
この尾桐直也が奪い取っただけのことだ」
「玲音てめぇーーーまたあの時のようにいじめられたいのか? ああ」
「だから直也様。勇者ともなるお方が庶民を脅してはなりません」
「ルテア王女。こんなザコの玲音にどう考えてもインゴッドドラゴンが
倒せるわけないだろう? それにこいつは昔から俺が回復魔法が
使えるとか思い込みが激しい嘘つきで……」
「違う。僕を信じてくれよ、ルテア王女」
「それもそうですね。貧しさへの逆恨みでしょうか?」
「……ナーニャはお姉ちゃん達の敵を打つために
毎日に努力していたんだよ。
僕の言葉いやナーニャの勇気ある行動を信じて下さいよ」
いくら獣人とはいえ普通の女の子があの筋肉を手に入れたんだ。
僕にはナーニャの血と汗の努力を感じる。
「話はだいたい分かりました。その目からあなたも嘘を
付いているようには見えません」
「なら分かってくれますか? ルテア王女」
「双方の話を纏めると敵討ちに失敗して直也様が助けにきて
インゴッドドラゴンを討伐完了。
そしてあなたたちは自分の手柄にしたくて直也様を
襲撃したってことでしょうか?」
「違うんだ、ルテア王女。襲撃したのは……」
ナーニャだ。討伐したのも直也。
なら僕たちがやってきたことって全て無意味だったってことのかよ。
それはあんまりだ。あんまりな結果だよ。
「その顔は全ての結論が出ましたね」
「これだけは言わして下さい。お願いします。
インゴッドドラゴンを倒したのは全てナーニャの力なんだ。
僕は何もしなかった」
「もう、言わなくていいです。
あなたはこの娘を愛しているんですね」
なんで誰も信じてくれないんだよ、確かにとどめは
尾桐直也かもしれないけどな。
ナーニャは最後まで死ぬ気で頑張って戦い抜いたんだよ。
「……そういうことだな、ホラふき玲音。
この女の子はインゴッドドラゴンの報酬として貰うぜ。
勇者の特権としてそのぐらいいいだろう、ルテア王女」
「それはこの娘の判断に委ねるものですので。
いくら私の権力を使っても無理です」
「この女は俺様のことが好きって言っていたのよな? 玲音」
このままイエス応えればお金の困らない裕福な暮らしが待っている。
でもそれだとナーニャの心はどうなるんだろう?
ナーニャの性格なら死んでもお金は選ばないと思うから、
「神に誓っても言っていない」
「また嘘かよ。もうみんなも分かるよな?
どちらの答えが正しいのかを。この勇者の声に嘘はないと。
インゴッドドラゴンを倒したのはこの俺様なのに。
手柄欲しさに平気で嘘を付く悪者がこの中に混じっているってことをよ」
「こんな元奴隷と獣人の女だけで我が国でも討伐することが出来なかった
インゴッドドラゴン・ルミエールが倒せるわけないんだぁーーー」
「そうだ、そうだ」
この嫌な空気はまたかよ。いくら僕たちが正しくても優等生である
篠染優介には勝てない。それの取り巻きである尾桐直也も同様だ。
かけ声だけで一気に悪人に落とされる展開になる。
思えば妖精国イルバーナでも同じようなことが起こったよな?
いったい勇者ってなんなんだよ、まったく。
「まずはこの娘の命が大事です。傷の治療を優先しましょう。
残念ながらこの場には回復魔道士は不在では何もできません。
一時エイデベルトに帰還します。
この娘を愛しているなら当然あなたも来ますよね」
「僕は……」
スフレの情報を一刻も早く集めないと……。
いやカティアところに戻るのが先か?
もうナーニャ安全だ。このルテア王女なら助けてくれると信じている。
「こんなペテン師野郎を連れていくとエイデベルトが汚れるんだ。
このまま玲音にトドメをさしましょうぜ。ルテア王女」
「それが勇者様の言葉ですか? 勇者とは弱気者をいたわる慈悲の心です。
心だけはよっぽどこの玲音ってヒトの方が勇者様と思えます」
「そりゃないぜ、ルテア王女。玲音てめぇ、調子に乗るなよ。
お前じゃない。俺様がこの世界を救う勇者なんだぞっ」
「はいはい分かりました。もう直也様は黙っていて下さい。
今は玲音ってヒトに話を聞いているんです」
「……カティアと約束したんだ」
「カティアって女か? もし女だったら俺様が
この倒れている女と一緒に抱いてやるぞ」
「いいから女好きの直也様は少し黙っていて下さい。
あなたの傷も癒やさないとその約束も果たせませんよ、玲音」
「でも一刻も早くマガディに帰らないと約束が……」
だんだんと意識が遠くなる。
「カティア、カティアとの約束が……」
「……あなたの思いこの私が確かに受け取りました。
直ちにこの者達を我が城エイデベルトにお連れします。
この2人を死なすことはこの私が絶対に許しません」
お読み頂きありがとうございます。感謝感激雨あられです。
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この本主人公である篠染玲音のようにみんなに無視されるのが1番怖くて、
読者様の反応があるだけでどれだけ心が救われるでしょうか?
少しでも読者様の貴重なお時間を楽しい時間に変えられたら嬉しい限りです。




