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3章 54話 勇者尾桐直也

「お前か? あたしの思いを踏みにじったのは?」


騎士の姿となった尾桐直也に怯えることなく

ずかずかと突っかかっていくナーニャ。


「なんだ、この頭の悪い獣人は?」


「あたしと玲音がここまでインゴッドドラゴンを追い詰めた。

 あんたは横からおいしい獲物を奪ったどら猫と一緒よ」


「命の恩人にその口はないだろうこの女がっ」


「きゃーーーー」


尾桐直也の手にドス黒い霧が集まったと思ったら、

一瞬でナーニャの小さな体は吹き飛ばされてしまう。


「おいおい玲音だとぉ。ひょっとお前篠染玲音か?」


「……嫌違う」


バレるなよ? 他人の空違いって思わせるんだ。


「なら、何故俺様の目を逸らす」


「それは……」


ううう、また頭が割れるように痛い。

やめてくれ、嫌な過去をこれ以上思い出させないでくれって。


「あんたのコードネームって篠染玲音じゃなかったの?」


またこんな時に限って余計な追撃するんだナーニャ。

そのまま気絶してくれれば尾桐直也の勘違いで通せたかもしれないのに。


「くははっ、やっぱり弱虫の玲音じゃねえか?

 姿形が変わってもお前のぶっきらぼうなオーラはちっとも変わってねぇな?」


「篠染玲音じゃない。……そう今の僕はレオ……レオンハルト」


「何がレオンハルトだ。コードネームって中二病のバカのセリフじゃねえか?

 そうか分かったぞ? 現実から逃げたと思ったら、

 今度は異世界に転生しての逃避行か?

 お前は俺様と違って姿を変えないと生きていけない卑怯者だもんな?」


この僕が卑怯者?

確かにナーニャの気絶を願ったり、最低な行為をしたのも事実。

やっぱりあのまま僕は車に跳ねられて死ねば良かったんだ。

そしてらこんな苦しみや醜態を背負わずに楽に死ねたんだ。


「玲音は卑怯者じゃない。卑怯者はあんたの方だ。

 インゴッドドラゴン戦いに水を差すわ、怪我人にも女の子にも容赦しない。

 魔法が使えるなら正々堂々と戦うためにあたし達を回復しなさいよねっ」


まだこんな惨めな僕をナーニャは見捨てていないのか?


「それは受け入れない交渉だな?

 地べたで這いつくばって俺様を下から崇めている方が

 お前達にはお似合いの姿だからよう。

 これから俺様の靴でも舐めてくれるんだろ」


へとへとのナーニャは不死鳥のごとく立ち上がって、


「いーーーだ。あんたなんかぎっとんぎっとんのぺしゃんこにして

 土にまみれた地面の味をたっぷりとご馳走してやるんだから

 これから覚悟しなさいよねっ」


「これはまた面白い冗談を言う女だぜ。その心意気、気に入った。

 ただし、条件がある。俺様の第6婦人になれ。

 そしたらそこの玲音もおまけに回復してやる」


尾桐直也の提案を飲んで僕たちを回復して貰え、ナーニャ。

そして不意をついて尾桐直也を倒すんだ。

ナーニャのあのインゴッドドラゴンを追い詰めた力だったら絶対に勝てる。

そしたら形が変わるがナーニャの怨念もきっと報われるから。

……クソ、これもまた自分の保身しか考えられない卑怯者の考えなんだ。


「お前は運がいいぞ、この世界を救う勇者の女になる最高のチャンスを

 与えてやっているんだからな。俺様に感謝しろっ」


「いーーーだ。誰があんたの女に死んでもなるもんですか?

 あたしは勇者様はただ独りだけ……」


ひょっとしてこんなダメな僕をスフレ達のように

また勇者様って言ってくれるのか?

ならきっと今度こそ僕は奇跡の力に目覚めて覚醒するんだ。

そしてこの世界の本当の勇者へとなるんだ。


「元勇者アイシア様よ」


ああアイシアお姉ちゃんか? なら仕方ないな。

でもそこは嘘でも方便でも僕って応えて欲しかったって。

あれ、あれいつもと思考が完全に違う。

なにアイシアの名前を聞いて、うきうきと興奮しているだ。

クールになれ。もっと昔のあの頃のように冷徹になるんだ。


「ああ確か元勇者アイシアって伝説では女だったけ?

 もう照れるなよ、そうだな? そのアイシアも俺様が抱いてやる。

 お前と一緒に全て愛してやる。いい提案だろ?

 これからお前は俺様と一緒に凄い裕福な暮らしが出来るぞ」


「遠慮せずに尾桐直也に治療して貰うんだ。ナーニャ。

 そしてこいつにナーニャの本当の力をみせてやれっーーーー」


「誰に口を聞いているんだ玲音。

 こいつじゃねいだろ、それに尾桐直也様だろ、ちゃんと覚えろや」


「ぐぉーーーー」


僕のお腹目がけて尾桐直也の鋭い蹴りを入れる。

ダメだ。もう息が出来ない。


「弱いヤツは俺様の許可なくもうしゃべるなよ。慈悲はやめた、やめた。

 先きに玲音を殺そうか? うん、そうしよう」


「……やめなさいよ、あたしとの戦いはまだ終わってない。

 1対1であたしと勝負しろ」


「そんなに俺様に構って欲しいのか?

 やっぱ本当は俺様のことが好きなんじゃねぇのか? お前」


「いーーーだ。あんたなんか大嫌いよ、死ねバーーカ」


「そうか? 俺様のオモチャにならないんなら先に死んでくれっ」


尾桐直也はナーニャに飛びかかろうと膝を曲げる。


「これだから、男は嫌いなのよ。ごめん、玲音。約束を守れなくて」


なんで、ナーニャが謝るんだよ。僕たちは仕事の関係じゃなかったのか?

もうインゴッドドラゴンは倒したから?

もう自分でも分けが分からないんだ。


「待って下さい。尾桐直也様。僕の命はどうなってもいい。

 ナーニャの命だけは命だけは……」


とっさに体が動いて、尾桐直也の足に食らいつく。

僕よりもナーニャが生きてくれればスフレの助かる確率が上がるから。


「だから俺に命令するなよ。

 ひょっとしてこの女の子ことが好きなのか?」


「いや別にそう言うわけには……」


ごめんな、ナーニャ。もし君のことが好きって言ったら

きっと僕を拒否するだろ。今の関係が壊れるのは怖いんだ。


「本当にお前は意気地無しだな。可哀想な女だよな。

 やっぱりこの女を愛せるのは俺様だけだよなって!?」


気がつくと懸命にナーニャが尾桐直也に飛びかかっていて、


「ちょっとこのあたしを無視して話を進めるなぁーーー!」


にやりと尾桐直也のヤツ笑いやがった。

あいつはまだナーニャのことをか弱い女の子だと思っているんだ。


「いけーーーーナーニャ。全ての恨みをあいつにっ」


「うぉーーーー」


ナーニャの渾身の一撃が尾桐直也の顔面にクリティカルヒット。

尾桐直也の顔が変形して大地へと倒れていく。

僕は尾桐直也の横にうつ伏せになっているナーニャに駆け寄って、


「やったな、ナーニャ。

 僕たちいやナーニャ1人の大勝利だ」


ナーニャの手を優しく握りしめると小さな石がこぼれ落ちる。

ナーニャはもう自分には力がないって気づいて石を頼ったんだ。

拳は重いほうが衝撃力が増すという考えで。


「起きろよな? ナーニャ。

 また僕に『いーーーだ』って罵倒してくれよ」


あんな血豆だらけの手で、必死に我慢して。

僕は尾桐直也に怖がってインゴッドドラゴンのように

倒そうって考えはなかった。

過去の苦い記憶。悔しい悲しい記憶。

全て幻想に捕らわれて逃げて、ナーニャ独りに頼っていたんだ。


「くくーーーー、よくもやりやがったな。クソガキ。

 邪魔だ、どけっーーー」


「ぐふ」


地面に吹き飛ばされる僕。

尾桐直也は無理矢理ナーニャの体を掴んで、


「きぁあーーー」


ナーニャの骨がギシギシと鳴り響く。


「このまま背骨をへし折られたくなかったら、

 俺様のことを愛しているって言えっ」


「……嫌だ、嫌だよ」


ナーニャの嘆きが僕を狂わせる。


「うぉーーー尾桐直也っーーーー!」


尾桐直也に向かっての必死のタックル。

生まれて初めての尾桐直也への抵抗。


「なに、俺様にぶっかってきているんだよぉ」


尾桐直也の手から一瞬ナーニャが離れる。


「そんなに先に俺様に殺されたいのか?」


終わった、でも悔いはない。元々死ぬことは怖くなかった。

ナーニャの死を見ずに死ねることは嬉しい。

ただ心の残りはスフレを助けられなかったことだ。

でもカティアに任せればいい。あいつは天才美少女僧侶なんだ。

きっと知恵でスフレを救ってくれるって信じているから。


「死ねぇーーーーー玲音っーーー!」


どうやらここで僕の旅は終わりだ。後は任せた、カティア。

スフレを。そしてこの世界を頼む。


「いったい元奴隷に何をしているのですか?

 また直也様は勇者様なのに弱い者いじめをして楽しいですか?」


「……ルテア王女」


尾桐直也の蹴りが止まる。

そこには美しいドレスをきた場違いの女性と数名の兵士が立っていた。

お読み頂きありがとうございます。感謝感激雨あられです。

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☆でも押して頂けると更に嬉しいです。

作者の書くモチベーションにも繋がってきます。

この本主人公である篠染玲音のようにみんなに無視されるのが1番怖くて、

読者様の反応があるだけでどれだけ心が救われるでしょうか?

少しでも読者様の貴重なお時間を楽しい時間に変えられたら嬉しい限りです。

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